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書誌情報

Vol.53 No.1 January 2005

原著・基礎

β-lactam antibiotic-induced vancomycin resistant MRSAに対する各種抗菌薬の抗菌力

前橋 一紀, 田端 麻紀子, 谷 眞理子, 清水 正樹, 加藤 佳久, 疋田 宗生

明治製菓株式会社感染症研究所

要旨

 抗methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬であるarbekacin(ABK),vancomycin(VCM)およびteicoplanin(TEIC)に対して,VCMとβ-ラクタム系薬で拮抗現象を示すMRSA株(β-lactam antibiotic-induced VCM-resistant MRSA:BIVR)ならびにその性質を示さないMRSA(non-BIVR)株の感受性を比較検討した。VCMを4 μg/mL含有する市販のMu3培地を用いてVCMとceftizoxime(CZX)との拮抗の有無により,臨床分離MRSA 121株をBIVR 16株とnon-BIVR 105株に区分した。BIVRとnon-BIVRに対するABKのMIC50は共に0.5 μg/mLで,MIC90はそれぞれ2および4 μg/mLであった。また,低濃度(0.06あるいは1 μg/mL)のCZXとの併用により,ABKの抗菌活性は低下しなかった。一方,VCMのBIVRに対するMIC50およびMIC90は共にnon-BIVRに比べて2倍高い値を示し,またCZXとの併用によりBIVRに対するVCMのMIC50およびMIC90がそれぞれnon-BIVRより4倍高い値を示した。TEICではVCMとは異なり低濃度のCZXとの併用による抗菌活性の低下はみられなかったが,BIVRに対する単剤のMIC50およびMIC90はnon-BIVRよりそれぞれ8および4倍高い値を示した。次に,TEICのMICとBIVRの検出率との関連を調べたところ,TEICのMICが高い株ほどBIVR検出率が上昇し,non-BIVRのTEIC低感受性サブポピュレーションからBIVRが検出された。
 以上のことから,ABKの抗菌活性はBIVRあるいはnon-BIVRの違いによる影響をほとんど受けなかった。一方,VCMでは低濃度のCZXとの併用により,またTEIC単剤でそれぞれBIVRの感受性がnon-BIVRより低下した。

Key word

MRSA, arbekacin, vancomycin, teicoplanin, β-lactam antibiotic-induced vancomycin resistant MRSA

別刷請求先

神奈川県横浜市港北区師岡町760

受付日

平成16年10月15日

受理日

平成16年11月24日

日化療会誌 53 (1): 5-10, 2005