Vol.53 No.5 May 2005
症例報告
Tosufloxacinとcefotaximeの併用が有効であったニューキノロン低感受性腸チフスの1例
1)東京慈恵会医科大学感染制御部*
2)同 臨床検査医学
要旨
Tosufloxacin(TFLX)とcefotaxime(CTX)の併用が有効であったニューキノロン系薬(NQ)低感受性腸チフスの症例を経験したので報告する。症例は21歳の日本人男性。インド・ネパールを旅行後,39℃台の発熱を来し,9月9日当院入院となった。入院時検査所見では血小板減少,トランスアミナーゼの上昇を認めたが,末梢血塗抹標本上マラリア原虫は認めなかった。血液培養よりSalmonella enterica subsp. enterica serovar Typhiが検出されたため,腸チフスの診断のもと,TFLX 600 mg分2の内服を開始したが,解熱を認めなかった。薬剤感受性試験の結果,nalidixic acid(NA)に耐性であったことよりNQ低感受性菌と考え,CTX 4 g/日を併用したところ,まもなく解熱を認めた。検出されたチフス菌に対する最小発育阻止濃度はTFLXが0.25 μg/mL,CTXが0.5 μg/mL,NAが256 μg/mLであった。チェッカーボード法によりin vitroにおけるTFLXとCTXの相乗作用が確認された。TFLXとCTXの併用はNQ低感受性腸チフスに対し,有効な治療手段となることが示唆された。
Key word
typhoid fever, reduced susceptibility, combined effect, tosufloxacin, cefotaxime
別刷請求先
*東京都港区西新橋3-25-8
受付日
平成16年12月6日
受理日
平成17年2月22日
日化療会誌 53 (5): 309-312, 2005