Vol.53 No.12 December 2005
原著・基礎
Pseudomonas aeruginosaに対するカルバペネム系抗菌薬間の抗菌作用の比較
1)北里大学大学院医療系研究科環境感染学(現 宮崎県立看護大学)
2)北里大学大学院医療系研究科環境感染学
3)北里大学医学部微生物学
4)北里大学大学院医療系研究科環境感染学, 北里大学医学部微生物学*
要旨
臨床分離のPseudomonas aeruginosa 50株に対するカルバペネム系抗菌薬[imipenem/cilastatin(IPM/CS),meropenem(MEPM),biapenem(BIPM)およびdoripenem(DRPM)]のMIC50とMIC90値は順に(2,16),(1,16),(1,16),(1,8) μg/mLであった。P. aeruginosa pf-18株に対するヒト新鮮血清存在下での抗菌薬の殺菌力は,IPM/CSとBIPMの場合抗菌薬単独時に比べてさらに増強されたが,MEPMおよびDRPMは薬剤単独時のそれとほぼ同程度であった。この薬剤処理による経時的殺菌力の違いは,IPM/CSとBIPMの場合は菌体の球形化(spherical forms)と溶菌像,MEPMとDRPMの場合は菌体の伸長化(filamentous forms)と一部のコブ状形成等の違いとして確認された。P. aeruginosa由来のpenicillin binding proteins(PBPs)に対する結合親和性を調べると,IPM/CSおよびBIPMではPBP4,2,1A≒3,1B,MEPMはPBP4,3,2,1A≒1B,DRPMはPBP4,3,2,1A,1Bの順に強い結合親和性を示した。クラスC型β-ラクタマーゼを誘導するための各薬剤の至適濃度は,IPMとBIPMはsub MIC濃度,MEPMとDRPMにおいては3MICまたはそれ以上の濃度であった。以上の結果をまとめるとP. aeruginosaに対する4薬剤のカルバペネム系薬は,薬剤単独または新鮮血清存在下での短時間殺菌力の動向,PBPs結合親和性と形態変化の違い,あるいはクラスC型β-ラクタマーゼを誘導するための至適濃度の違い等からIPM/CSとBIPMの群とMEPMとDRPMの群の2群に分けられた。
Key word
Pseudomonas aeruginosa, carbapenem, penicillin binding proteins, class C β-lactamase, inducibility
別刷請求先
*神奈川県相模原市北里1-15-1
受付日
平成17年10月13日
受理日
平成17年11月9日
日化療会誌 53 (12): 732-740, 2005