ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.54 No.2 March 2006

原著・臨床

呼吸器感染症治療におけるpanipenem/betamipronおよびcefozopranによる治療日数と治療費の比較検討

砂川 慶介1), 小林 慎2,3), 後藤 元4), 和田 光一5)

1)北里大学医学部感染症学
2)クレコンリサーチアンドコンサルティング株式会社医療アセスメント研究部
3)名古屋大学大学院医学系研究科医療管理情報学
4)杏林大学医学部第一内科
5)とやの中央病院内科

要旨

 呼吸器感染症の初期治療におけるカルバペネム系抗菌薬panipenem/betamipron(PAPM/BP)および第三世代セフェム系抗菌薬cefozopran(CZOP)の治療日数および治療費を比較検討した。中等症以上の細菌性市中肺炎および慢性呼吸器疾患の二次感染の入院患者を対象に,登録された被験者をPAPM/BPまたはCZOPによる治療にランダム化割付し,注射用抗菌薬投与日数(治療途中に切替えた注射用抗菌薬を含む投与日数)および症状改善日数(体温・CRP・白血球数が基準値以下となるまでの日数)を最長試験薬投与28日後まで評価した。また入院期間および注射用抗菌薬投与期間における治療費を推計した。登録された120例のうち非細菌感染症例等を除く有効性・経済性の解析対象症例92例(PAPM/BP群45例,CZOP群47例)の注射用抗菌薬投与日数(中央値)はPAPM/BP群8.0日,CZOP群10.0日(p=0.1480),症状改善日数(中央値)はPAPM/BP群6.0日,CZOP群8.0日(p=0.0268)といずれもPAPM/BP群の方が短期間であった。治療費(入院費,試験薬費,切替え・併用抗菌薬費,副作用治療薬費,検査費)の平均は,入院期間では,PAPM/BP群262,862円,CZOP群276,720円(差額-13,858円),注射用抗菌薬投与期間では,PAPM/BP群218,604円,CZOP群236,421円(差額-17,817円)といずれもPAPM/BP群の方が低額であった。内訳では,試験薬費は,CZOP群に比べPAPM/BP群が高額であったが,入院費,検査費,切替え・併用抗菌薬費はPAPM/BP群の方が低額であった。試験薬投与終了時の有効率は,PAPM/BP群97.8%(44/45例),CZOP群87.2%(41/47例)であった。また副作用発現率はそれぞれ22.0%(13/59例),32.2%(19/59例)で,重篤なものはなく,試験薬の投与中止または投与継続中に回復または軽快した。以上より中等症以上の呼吸器感染症においてPAPM/BPを第一選択薬とする治療は,CZOPによる治療に比べて治療日数が短縮され,治療費が経済的であることが示唆された。

Key word

respiratory tract infection, panipenem/betamipron, cefozopran, treatment duration, pharmacoeconomics

別刷請求先

神奈川県相模原市北里1-15-1

受付日

平成17年10月21日

受理日

平成18年1月10日

日化療会誌 54 (2): 111-124, 2006