Vol.54 No.6 November 2006
症例報告
抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドラインに基づき治療しえた手術中のショックの1例
札幌医科大学医学部麻酔学講座*
要旨
2003年,日本化学療法学会の提言により,全国の病院でいわゆる抗生剤テストが省略されることになった。アナフィラキシー発症への懸念が増すことになったが,本学会では「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」(以下ガイドライン)を作成して,従来以上の観察と対応を喚起した。今回,われわれは手術中のアナフィラキシーショックに対し,ガイドラインに基づき迅速に対応しえたので報告する。
症例は63歳,女性。肛門部のBowen病に対し肛門部周囲切除と人工肛門造設が予定された。全身麻酔導入後にセフメタゾール点滴静注を開始した。5分後,収縮期血圧が53 mmHgまで急激に低下し,顔面と手掌の発赤・浮腫を認めた。セフメタゾールによるアナフィラキシーショックを疑い,ただちに投与を中止して,エピネフリンの静脈内投与をはじめとするガイドラインに沿った治療を開始した。患者は気管挿管されたままICU入室となったが順調に回復した。
抗菌薬によるアナフィラキシーショックに対して,ガイドラインに沿って適切に診断,治療を行った。ガイドラインは手術中のアナフィラキシーショックに対しても有用であるが,麻酔科医はガイドラインに基づいた問診と厳重な観察,ショック時の迅速な対応が要求される。
Key word
anaphylactic shock, antibiotic
別刷請求先
*札幌市中央区南1条西16丁目
受付日
平成18年6月22日
受理日
平成18年8月23日
日化療会誌 54 (6): 531-534, 2006