Vol.54 No.6 November 2006
短報
原発不明腺癌に対するpaclitaxelとcarboplatinの併用化学療法
東邦大学医療センター大森病院血液・腫瘍科*
要旨
日常の臨床においては転移巣の生検により悪性腫瘍の診断が得られながら,広範な検査を施行してもなお原発巣が同定できない症例に遭遇することはしばしば経験するところである。われわれは4例の原発不明腺癌症例に対してpaclitaxel(TXL)とcarboplatin(CBDCA,JM-8)による併用化学療法(TJ療法)を施行した。男性2例,女性2例であり,年齢中央値は58歳であった。TXL(200 mg/m2,day 1)とCBDCA(target AUC: 6 mg/mL/min,day 1)の併用療法を3週間隔で施行した。1例でpartial response(PR)が得られ,2例ではstable disease(SD),1例は評価不能(non evaluable; NE)であった。PRを得た症例の奏効期間は24カ月+であり,生存期間はPR症例では26カ月+,SD症例の1例では20カ月,他の1例は併用化学療法終了後15カ月以降は追跡されていず,NE症例では2カ月であった。
近年,原発不明癌の治療に関してはCBDCAを基本とした併用化学療法が推奨されており,その治療成績は改善されてきているが,満足すべきものではなく,さらに予後の改善を目指して今後とも臨床試験の施行が必要であろう。
Key word
adenocarcinoma of unknown origin, combination chemotherapy, paclitaxel, carboplatin
別刷請求先
*東京都大田区大森西6-11-1
受付日
平成18年7月14日
受理日
平成18年9月8日
日化療会誌 54 (6): 535-537, 2006