Vol.55 No.3 May 2007
原著・臨床
臨床材料からのメタロ-β-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌の検出状況と薬剤感受性
1)順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床検査部*
2)順天堂大学医学部附属練馬病院臨床検査科
3)同 医学部臨床検査医学
4)同 医学部輸血・幹細胞制御学
要旨
当院における2001~2005年の各種臨床材料からのメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生グラム陰性桿菌の検出状況,薬剤感受性および日常検査におけるスクリーニングについて検討した。メルカプト酢酸ナトリウム(SMA)阻害試験でスクリーニングされたMBL産生株は,5年間で重複例を除き352株であった。これらのうち,PCR法でプラスミド性MBL遺伝子が検出された株は247株で,MBL遺伝子型はすべてIMP-1 groupであった。247株の菌種は,ブドウ糖非発酵菌はPseudomonas aeruginosa 79株(32.0%),Pseudomonas putida/fluorescens 38株(15.4%),Acinetobacter spp. 37株(15.0%),Achromobacter spp. 11株(4.5%),Alcaligenes spp. 6株(2.4%),腸内細菌科ではEnterobacter cloacae 50株(20.2%),Citrobacter freundii 12株(4.9%),Providencia rettgeri 7株(2.8%),Serratia marcescens 3株(1.2%),Klebsiella spp. 3株(1.2%),Escherichia coli 1株(0.4%)であった。IMP-1 group陽性株は全体的には年次的に増加傾向は認められなかったものの,P. aeruginosaおよびE. cloacaeは,それぞれ2005年,2003~2005年でやや増加していた。IMP-1 group陽性株の薬剤感受性は,Pseudomonas spp., Acinetobacter baumannii, Achromobacter spp., S. marcescensで多剤耐性株が多かった。一方,S. marcescensを除く腸内細菌科,Acinetobacter lwoffiiおよびAlcaligenes spp. では多剤耐性株が少なく,imipenem(IPM)感性株が多かった。P. aeruginosaはMBL遺伝子保有株が最も多く,最近5年間の頻度は0.3~1.5%であった。一方,多剤耐性株は年次的に増加傾向であり,2005年におけるIPM-gentamicin(GM)-levofloxacin(LVFX)耐性とIPM-amikacin(AMK,中間を含む)-LVFX耐性の頻度は,それぞれ3.7%,3.9%であった。MBL産生菌は日常検査で監視すべき耐性菌であり,SMA阻害試験はこのタイプの耐性菌の検査にきわめて有用と考えられた。
Key word
metallo-β-lactamase, IMP-1, sodium mercaptoacetic acid, multidrug-resistant, Pseudomonas aeruginosa
別刷請求先
*東京都文京区本郷3-1-3
受付日
平成18年9月13日
受理日
平成19年1月30日
日化療会誌 55 (3): 211-219, 2007