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書誌情報

Vol.55 No.3 May 2007

症例報告

Teicoplaninが奏功した冠状動脈バイパス術後に発症したmethicillin-resistant Staphylococcus aureus縦隔炎の1症例

辻 泰弘1), 佐道 紳一1), 神村 英利2), 谷口 真一郎3)

1)佐世保中央病院薬剤科
2)福岡大学筑紫病院薬剤部
3)佐世保中央病院心臓血管外科

要旨

 症例は78歳,女性。冠動脈三枝すべてに高度狭窄を有する重症三枝病変のためcoronary artery bypass grafting施行。術後34日目に縦隔炎と診断され,縦隔の排液からKlebsiella pneumoniaeが検出された。このため,cefozopran(CZOP)を投与したが,術後39日目にmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)に菌交代した。その治療には腎機能障害を考慮し,arbekacinとvancomycinを使用せずteicoplanin(TEIC)単剤投与を選択した。また,添付文書どおりの投与量では重篤なMRSA縦隔炎には効果が乏しいと判断し,投与初期から薬物血中濃度モニタリング(TDM)を積極的に実施し,TEICの血中トラフ濃度を投与終了まで≧20 μg/mL(400→200 mg/日)に維持することに努めた。その結果,臨床症状・検査成績は改善し,MRSAも消失したため,投与50日目で投与中止した。
 TEICの血中濃度を添付文書どおり,5~10 μg/mLに設定すると多くのMRSA感染症例には無効とされており,TEICの用法・用量もしくは基準濃度域については再検証が必要である。MRSA縦隔炎に対しては,TDMを積極的に行い,TEICの血中トラフ濃度を≧20 μg/mLに設定することが新たな治療手段の一つになると考えられた。

Key word

teicoplanin, TDM, mediastinitis, MRSA

別刷請求先

長崎県佐世保市大和町15番地

受付日

平成19年1月10日

受理日

平成19年3月9日

日化療会誌 55 (3): 230-234, 2007