Vol.55 No.6 November 2007
抗菌薬感受性報告
2004,2005年の複雑性尿路感染症患者からの分離菌に対する抗菌活性
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科尿路系腫瘍学*
要旨
2004,2005年に,鹿児島大学病院泌尿器科の入院あるいは外来の複雑性尿路感染症患者から分離された菌株のうち,Staphylococcus aureus 9株,Enterococcus faecalis 13株,Escherichia coli 41株,Klebsiella spp. 17株,Pseudomonas aeruginosa 44株の計124株を抗菌薬の最小発育阻止濃度(MIC)測定の対象とした。
S. aureus,E. faecalisに対してはvancomycin,teicoplanin,arbekacinの3薬剤が強い抗菌力を示した。E. faecalisにはampicillinとpanipenem,imipenemが強い抗菌力を示した。E. coli,Klebsiella spp.に対してはカルバペネム系,セフェム系抗菌薬が強い抗菌力を示したが,フルオロキノロン耐性E. coliの分離頻度は当科からの過去の報告データと比較すると,増加していた。P. aeruginosaではカルバペネム系抗菌薬低感受性株の増加がみられ,多剤耐性株も6株(13.6%)認められた。
測定の時点で,カルバペネム系抗菌薬はMRSAを除く複雑性尿路感染症患者由来株に対して強い抗菌力(MEPMについては,各菌種の感性率はE. faecalis,E. coli,Klebsiella spp.では100%,P. aeruginosaでは93.2%)を保持していたが,P. aeruginosaの耐性化の動向には今後も継続して注意する必要がある。
Key word
urinary tract infection, antimicrobial activity, fluoroquinolone-resistant Escherichia coli, carbapenem-resistant Pseudomonas aeruginosa
別刷請求先
*鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘8-35-1
受付日
平成19年3月26日
受理日
平成19年8月31日
日化療会誌 55 (6): 473-478, 2007