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書誌情報

Vol.56 No.S-1 April 2008

原著・基礎

Sitafloxacinの細菌学的評価

神田 裕子1), 黒坂 勇一1), 藤川 香津子1), 千葉 めぐみ1), 山近 伸一郎1), 奥村 亮1), 樫本 佳典1), 魚山 里織1), 星野 一樹1), 田中 眞由美2), 大谷 剛1)

1)第一三共株式会社生物医学第四研究所
2)同 プロジェクト推進部

要旨

 新規キノロン系抗菌薬sitafloxacin(STFX)は,各種細菌の臨床分離株を用いた感受性試験において,既存キノロン系抗菌薬耐性菌を含むグラム陽性菌ならびに陰性菌,さらにはMycoplasma pneumoniaeおよびChlamydiaceaeなどに対して,levofloxacin,ciprofloxacin(CPFX),moxifloxacinおよびtosufloxacinと比較して,最も高い抗菌活性を示した。特に,呼吸器感染症主要原因菌であるStreptococcus pneumoniaeおよび尿路感染症主要原因菌であるEscherichia coliに対して,それぞれ0.06および1 μg/mLのMIC90を示し,対照キノロン系抗菌薬と比較してそれぞれ4~64倍および16~32倍以上強い抗菌力を有していた。これらを含む主要菌種によるマウス敗血症モデルにおいて,STFXは,高いin vitro抗菌活性を反映した強い感染防御効果を示した。また,本薬は,Pseudomonas aeruginosaに対してCPFXを上回る抗菌活性を示し,ラットを用いた複雑性尿路感染症モデルにおいても,CPFXより高い治療効果を示した。作用機作解析の結果では,STFXは,S. pneumoniaeならびにE. coli由来のDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼIVの野生型ならびにキノロン耐性決定領域の1あるいは2カ所にアミノ酸置換を有する変異型酵素に対し,対照キノロン系抗菌薬と比較して高い阻害活性を示した。本薬の一変異型酵素に対する阻害活性は,対照キノロン系抗菌薬の野生型標的酵素に対する阻害活性と同等であった。
 in vitroシミュレーションシステムを用いたヒト常用量(50 mg 1日2回)および最高用量(100 mg 1日2回)経口投与時の血清中濃度推移での殺菌効果の検討では,STFXはStaphylococcus aureusS. pneumoniaeE. coliP. aeruginosaHaemophilus influenzaeおよびMoraxella catarrhalisに対して優れた殺菌効果を示した。特に,S. pneumoniaeH. influenzaeM. catarrhalisに対しては,ヒト常用量投与モデルで,MIC90値に相当するMICを示す菌株に対しても強い殺菌効果を示した。さらに,キノロン系抗菌薬の薬効発現に関与する主要な薬物動態パラメータであるAUCに着目し,ヒトと同程度の血中AUCをマウスにて再現した結果,STFXはペニシリン耐性S. pneumoniaeによるマウス肺炎モデルにおいて高い治療効果を示した。

Key word

sitafloxacin, antibacterial activity

別刷請求先

東京都江戸川区北葛西1-16-13

受付日

平成19年11月5日

受理日

平成20年1月8日

日化療会誌 56 (S-1): 1-17, 2008