Vol.56 No.S-1 April 2008
原著・臨床
複雑性尿路感染症を対象としたsitafloxacinの用量比較試験
1)岐阜大学医学部*
2)岐阜大学大学院医学系研究科医科学専攻病態制御学講座泌尿器科学分野
3)神戸大学大学院医学系研究科外科学講座腎泌尿器科
4)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器病態学
5)産業医科大学泌尿器科
6)九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野
7)東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座感染制御・検査診断学分野
8)東京慈恵会医科大学薬理学講座
要旨
経口ニューキノロン系抗菌薬であるsitafloxacin(STFX)の複雑性尿路感染症に対する臨床推奨用量を,2用量群の無作為割付による二重盲検比較試験にて検討した。
カテーテル非留置の複雑性尿路感染症患者に対し,STFX 1回50 mg 1日2回(L群)または1回100 mg 1日2回(H群)をそれぞれ7日間経口投与し,UTI薬効評価基準(第4版暫定案)に従って臨床効果を判定した。
早期薬効判定における総合臨床効果は196例で検討され,有効率はL群91.0%(91/100),H群96.9%(93/96)であった。細菌学的効果は302株で検討され,原因菌の消失率はL群93.5%(145/155),H群96.6%(142/147)であった。
後期薬効判定におけるmicrobiological outcomeは189例で検討され,eradication率はL群56.3%(54/96),H群63.4%(59/93)であった。
治癒判定におけるmicrobiological outcomeは101例で検討され,eradication率はL群57.8%(26/45),H群57.1%(32/56)であった。
副作用発現率はL群24.6%(32/130),H群24.6%(31/126)であった。主な副作用は両投与群ともに下痢で,その発現率はL群に比べてH群でやや高くなる傾向がみられた。副作用の重症度は,いずれも軽度あるいは中等度であった。
以上の成績より,複雑性尿路感染症の治療においてSTFXは1回50 mg 1日2回投与で十分な臨床効果が期待でき,安全性に重大な問題はないことから臨床推奨用量として妥当であると判断した。
Key word
sitafloxacin, dose finding study, complicated urinary tract infection, double blind study
別刷請求先
*岐阜県岐阜市柳戸1-1
受付日
平成19年10月11日
受理日
平成19年12月18日
日化療会誌 56 (S-1): 92-102, 2008