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書誌情報

Vol.56 No.4 July 2008

総説

グラム陰性菌における薬剤排出システムの役割

西野 邦彦1~3), 山口 明人1, 2)

1)大阪大学産業科学研究所生体応答科学研究部門生体情報制御学研究分野
2)大阪大学大学院薬学研究科細胞生物学分野
3)科学技術振興機構さきがけ

要旨

 薬剤排出システムは細菌細胞内から抗菌薬等,細菌にとって異物となる物質を能動的に排出する。かつてより,薬剤排出システムは薬剤耐性細菌を生み出す因子として注目されてきた。ゲノム解析の結果,細菌には薬剤排出システムをコードしていると推定される遺伝子が数多く存在していることがわかってきた。細菌ゲノム情報を入手できるようになり,われわれは,細菌が保持している薬剤耐性遺伝子資源を解析することが可能になった。一方で,近年の研究から,薬剤排出システムは薬剤耐性だけではなく,細菌病原性発現に関与していることがわかってきた。これら一連のシステムは,薬剤だけではなく,病原性に関与する生理基質を認識して排出している可能性が考えられる。薬剤排出システムが薬剤耐性および病原性に関与する点から考えて,これを阻害することができれば薬剤耐性化を克服しながら,病原性を軽減させることのできる新しい感染症治療法開発に役立つものと期待される。

Key word

drug efflux system, multidrug resistance, virulence

別刷請求先

大阪府茨木市美穂ヶ丘8-1

受付日

平成20年2月20日

受理日

平成20年5月16日

日化療会誌 56 (4): 443-452, 2008