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書誌情報

Vol.56 No.4 July 2008

短報

化学療法施行後に末梢性顔面神経麻痺を発症した非ホジキンリンパ腫の2例

名取 一彦, 和泉 春香, 石原 晋, 長瀬 大輔, 藤本 吉紀, 加藤 元浩, 梅田 正法, 倉石 安庸

東邦大学医療センター血液・腫瘍科

要旨

 悪性腫瘍症例では腫瘍細胞の浸潤,感染,薬剤の副作用などで脳神経障害を呈することがある。われわれは悪性リンパ腫の化学療法終了後に末梢性顔面神経麻痺を発症した2例を経験した。2例はいずれも病理組織型はdiffuse large B cell lymphomaであり,臨床病期はIA期であった。おのおのR-CHO療法(rituximab,cyclophosphamide,adriamycin)およびR-CHOP療法(R-CHO+prednisolone)が施行された。おのおの化学療法終了後,66日目,31日目に右顔面神経麻痺が出現した。1例はデキサメサゾンの投与で症状が消失したが,他の1例は塩酸バラシクロビルとプレドニソロンが投与されたが,右口角下垂が残存した。末梢性顔面神経麻痺の原因としてherpes simplex zoster virus(HSV)によることが最も高頻度であり,副腎皮質ステロイド薬と抗ウイルス薬の併用が有効である。抗がん薬による化学療法施行後に発症した場合は腫瘍細胞の中枢神経系への浸潤の除外とHSVによる感染を想定して検索し,発症から治療開始までの期間が予後に影響することから早急に治療を開始する必要がある。

Key word

malignant lymphoma, chemotherapy, facial nerve paralysis

別刷請求先

東京都大田区大森西6-11-1

受付日

平成20年1月16日

受理日

平成20年4月22日

日化療会誌 56 (4): 472-474, 2008