Vol.57 No.S-1 March 2009
原著・基礎
TebipenemのStreptococcus pneumoniaeおよびHaemophilus influenzaeに対する作用機序
明治製菓株式会社医薬総合研究所*
要旨
新規経口カルバペネム系抗菌薬tebipenem pivoxilの活性本体であるtebipenem(TBPM)は,臨床分離Streptococcus pneumoniaeに対してきわめて強い抗菌力を示し,penicillin-binding protein遺伝子(pbp1a,pbp2xおよびpbp2b)に変異を有するpenicillin耐性株を含むすべての株の発育を0.12 μg/mLで阻止した。TBPMは,S. pneumoniaeのβ-ラクタム系抗菌薬耐性に関与する変異したPBP1A,PBP2X,PBP2Bに対してもcefditoren(CDTR),faropenem(FRPM)およびamoxicillin(AMPC)より高い結合親和性を示した。また,PBP3をコードするftsIに変異を有するβ-ラクタマーゼ非産生ampicillin耐性株を含むHaemophilus influenzaeに対するTBPMの抗菌力は,FRPMおよびAMPCより強く,アミノ酸置換の積み重ねによる耐性の影響を受けにくかった。TBPMは,H. influenzae ATCC49766の複数のPBPsに対して高い結合親和性を示した。S. pneumoniaeとH. influenzaeに対して,TBPMの耐性菌出現頻度は1~2×MICにおいて1.7×10-5~<1.8×10-9であり,既存のβ-ラクタム系抗菌薬と同様に4×MIC以下の濃度(S. pneumoniae;0.008~0.12 μg/mL,H. influenzae;0.5~2 μg/mL)で耐性菌の出現を抑制した。Sub-MIC濃度のTBPM存在下でS. pneumoniaeとH. influenzaeを14回継代したときのMIC上昇は,CDTRおよびFRPMと同様2~4倍以内であり,levofloxacin(2~32倍)に比べて小さかった。
Key word
tebipenem, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, PBPs
別刷請求先
*神奈川県横浜市港北区師岡町760
受付日
平成20年10月28日
受理日
平成21年2月6日
日化療会誌 57 (S-1): 15-29, 2009