Vol.57 No.S-1 March 2009
原著・基礎
Tebipenem pivoxilの小児臨床試験における肺炎球菌のPCR法による耐性遺伝子解析と抗菌薬感受性
北里大学大学院感染制御科学府病原微生物分子疫学研究室*
要旨
小児を対象としたtebipenem pivoxil(TBPM-PI)の臨床第II相試験および臨床第III相試験時に分離され,原因菌とされた肺炎球菌は,急性中耳炎由来が117株,急性副鼻腔炎由来が13株,肺炎由来が21株,合計151株であった。これらの菌株について,(1)pbp遺伝子とマクロライド耐性遺伝子,(2)TBPMを含む各種抗菌薬感受性,および(3)病原性にかかわる莢膜型について解析した。全体として最も多かったのはgPISP(pbp2x)の41.1%,次いでgPRSP(pbp1a+2x+2b)の34.4%,gPISP(pbp1a+2x)の12.6%であり,何らかの遺伝子変異を有する株は94.0%を占めた。これらの株はmef(A),あるいはerm(B)のいずれかのマクロライド系抗菌薬耐性遺伝子を保持していた。
TBPMのMIC値は,gPISP(pbp2x)に対し0.001~0.008 μg/mL,gPISP(pbp1a+2x)には0.004~0.031 μg/mL,gPRSPにも0.008~0.125 μg/mLであり,既存の経口抗菌薬に比べ明らかに優れていた。その抗菌力はpanipenemと同等であった。
急性中耳炎由来株の莢膜型は3型のgPISP(pbp2x)株が23.1%を占め,次いでgPRSPの多い19F,6B,14,23Fの順であった。これらの分離株に対する7価conjugate vaccine(7PCV)のカバー率は48.8%にすぎなかった。
以上の成績から,TBPM-PIは小児における急性中耳炎や肺炎を含むさまざまな耐性肺炎球菌感染症に対し,その細菌学的効果が期待される。
Key word
tebipenem, Streptococcus pneumoniae, pbp gene, PRSP, serotype, oral carbapenem
別刷請求先
*東京都港区白金5-9-1
受付日
平成20年9月26日
受理日
平成20年12月15日
日化療会誌 57 (S-1): 58-66, 2009