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書誌情報

Vol.57 No.S-1 March 2009

原著・基礎

Tebipenem pivoxilの小児臨床試験におけるインフルエンザ菌のPCR法による耐性遺伝子解析と抗菌薬感受性

岸井 こずゑ, 千葉 菜穂子, 諸角 美由紀, 濱野(長谷川) 恵子, 生方 公子

北里大学大学院感染制御科学府病原微生物分子疫学研究室

要旨

 Tebipenem pivoxil(TBPM-PI)の小児を対象とした臨床第II相試験と第III相試験において分離され,原因菌と判定されたインフルエンザ菌は,急性中耳炎由来が112株,急性副鼻腔炎由来が16株,肺炎由来が30株,計158株であった。全株についてβ-ラクタム系抗菌薬耐性化にかかわるPBP3をコードするftsI遺伝子解析を行い,それらを遺伝子レベルで識別した。最も多かったのはgBLNARの51.9%であり,gLow-BLNARが8.2%,gBLPACR-IとgBLPACR-IIがそれぞれ0.6%と1.9%の割合で認められた。gBLNASは36.7%にすぎなかった。分離されたインフルエンザ菌の94.9%は,莢膜を保持しない型別不能株であった。
 TBPMのgBLNARに対するMIC90は1.0 μg/mLであり,経口抗菌薬のなかではcefditoren(MIC90:0.25 μg/mL)に次いで優れていた。他の経口抗菌薬のgBLNARに対するMIC90は,ampicillinとfaropenemが8 μg/mL,amoxicillinとcefdinirが32 μg/mLであった。
 ftsI遺伝子の塩基解析では,次第にアミノ酸の置換数が増え始めていることが示された。また,無作為抽出したgBLNARの全DNAをSmaIで切断後にPulsed-field gel electrophoresisによってその切断パターンを比較した結果,著しい多様性が認められた。
 これらの成績から,TBPM-PIは小児のgBLNARによる急性中耳炎やその他の呼吸器感染症に対して,優れた細菌学的効果を有していると結論された。

Key word

tebipenem, Haemophilus influenzae, PBP-3, child, drug susceptibility

別刷請求先

東京都港区白金5-9-1

受付日

平成20年9月26日

受理日

平成20年12月19日

日化療会誌 57 (S-1): 67-75, 2009