Vol.57 No.S-1 March 2009
原著・基礎
小児急性中耳炎の中耳貯留液と上咽頭分離肺炎球菌とインフルエンザ菌の一致性
北里大学大学院感染制御科学府病原微生物分子疫学研究室*
要旨
小児急性中耳炎に対するtebipenem pivoxil臨床試験時において,中耳貯留液と上咽頭ぬぐい液の両方から肺炎球菌あるいはインフルエンザ菌の同一菌種が同時に分離された症例を対象とし,それらの菌が果たして同一であるのか否かを,(1)遺伝子学的薬剤耐性型,(2)莢膜型,(3)pulsed-field gel electrophoresis(PFGE)によるDNA切断パターンの相同性から検討した。小児急性中耳炎例399例のうち,中耳貯留液と上咽頭ぬぐい液の両方の検体から同一の遺伝子型の菌株が分離された症例は,肺炎球菌が107例,インフルエンザ菌が99例であった。中耳貯留液中の菌量が多かった症例では,上咽頭ぬぐい液中の菌量も多かった。このことから,上咽頭の細菌とその菌量を調べることにより,急性中耳炎の原因菌を類推することが可能であると結論された。
Key word
acute otitis media, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, PFGE
別刷請求先
*東京都港区白金5-9-1
受付日
平成20年9月26日
受理日
平成20年12月15日
日化療会誌 57 (S-1): 76-81, 2009