Vol.57 No.6 November 2009
原著・臨床
小児急性中耳炎におけるCefcapene pivoxilの臨床効果
1)杉田耳鼻咽喉科医院**
2)藤巻耳鼻咽喉科医院
3)原田歯科耳鼻咽喉科医院
4)吉田耳鼻咽喉科クリニック
5)木村耳鼻咽喉科小児科医院
6)小松耳鼻咽喉科クリニック
7)えの本耳鼻咽喉科医院
8)新井耳鼻咽喉科医院
9)田中耳鼻咽喉科医院
10)楠見耳鼻咽喉科医院
11)藤原ENTクリニック耳鼻咽喉科
12)荻原耳鼻咽喉科医院
要旨
小児急性中耳炎の主要な原因菌として肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)およびモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)がよく知られており,近年ペニシリン低感受性肺炎球菌(penicillin-intermediate S. pneumoniae;PISP)やペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistant S. pneumoniae;PRSP)さらにはβ-ラクタマーゼ非産生ABPC耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-negative ABPC-resistant H. influenzae);BLNAR)の増加が臨床上の問題となっている1。今回,これらの原因菌に抗菌力を有するセフカぺンピボキシル(cefcapene pivoxil;CFPN-PI)の小児用製剤を用いた治療について安全性,臨床効果と細菌学的評価を検討した結果を報告する。
小児急性中耳炎診療ガイドラインに基づいた重症度分類で,中等症,重症と診断された小児急性中耳炎患者223例(評価対象症例としては214例)について,CFPN-PIの常用量(9 mg/kg/日)または高用量(18 mg/kg/日)を平均7日間投与し,安全性,臨床効果ならびに細菌学的評価を検討した。検討の結果,常用量(9 mg/kg/日投与群),高用量(18 mg/kg/日投与群)の副作用発現率はそれぞれ15.5%および15.3%(p=0.48)となり両群間では有意差が認められず,安全性が同等であることが確認された。また臨床効果についても,常用量(9 mg/kg/日投与群)は75.0%に対し,高用量(18 mg/kg/日投与群)は77.6%と有効率に差のないことが示された(p=0.33)。しかしながら,9 mg/kg/日投与群では中等症患者における有効率が87.5%に対し重症患者では71.7%と臨床効果に差のある傾向(p=0.056)が認められるのに対し,18 mg/kg/日投与群の場合は中等症患者と重症患者に対する臨床効果はそれぞれ78.9%および77.2%(p=0.44)となり有意差を認めることができないとの結果であった。また,CFPN-PIは,今回検出された小児急性中耳炎の主要原因菌であるS. pneumoniae,BLNARを含めたH. influenzae,M. catarrhalisに対して良好な細菌学的効果を示した(Figures 5,6)。
これらのことから,今回の調査の範囲では重症化した小児急性中耳炎におけるCFPN-PIの高用量による治療の有用性が示唆されることが確認できた。
Key word
cefcapene pivoxil, child, acute otitis media, clinical study
別刷請求先
*千葉県千葉市美浜区高洲3-14-1 和紅ビル4F
受付日
平成21年3月3日
受理日
平成21年9月17日
日化療会誌 57 (6): 491-501, 2009