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書誌情報

Vol.58 No.S-1 March 2010

原著・臨床

Tazobactam/piperacillin(配合比1:8製剤)の第I相試験

柴 孝也

東京慈恵会医科大学

要旨

 注射用のβ-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン製剤であるtazobactam/piperacillinの配合比1:8製剤(TAZ/PIPC)の単回および反復投与における薬物動態と忍容性を日本人健康成人男子において検討した。
 (1)薬物動態
 TAZ/PIPC 2.25~4.5 gを5分静注および2.25~6.75 gを30分点滴静注で単回投与したところ,TAZの消失半減期(t1/2)は0.7~0.9時間,PIPCのそれは0.8~0.9時間であった。最高血中濃度(Cmax)は投与量の増加に伴い上昇し,TAZ/PIPC 4.5 gの5分静注では,TAZは49.7 μg/mLであり,PIPCは436 μg/mLであった。TAZ/PIPC 6.75 gの30分点滴静注ではTAZのCmaxは58.2 μg/mLであり,PIPCのそれは380 μg/mLであった。また無限大時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUCinf)も投与量の増加に伴い増加しTAZ/PIPC 4.5 gの5分静注では,TAZは50.4 μg・hr/mL, PIPCは381 μg・hr/mLであった。TAZ/PIPC 6.75 gの30分点滴静注ではTAZのAUCinfは83.4 μg・hr/mL, PIPCのそれは557 μg・hr/mLであった。全身クリアランス(CLT)はTAZ, PIPCともに投与量の増加に従い減少した。
 線形性について単回投与におけるTAZおよびPIPCのCmaxおよびAUCinfを用い,パワーモデルで解析した。その結果,5分静注,30分点滴静注ともに本用量範囲においては非線形な動態を示すものと考えられた。
 尿中への排泄率は,5分静注の投与後12 hrまでにTAZで78.8~81.3%,PIPCで55.2~56.7%であった。30分点滴静注ではTAZで63.5~71.2%,PIPCで46.0%~52.9%であり,主に未変化体として,尿中から排泄された。
 TAZ/PIPC 4.5 gの1日3回および1日4回で反復投与した時,投与6日目および8日目のTAZ,PIPCのAUCは投与初日と同様であり,反復投与により薬物動態は変化せず,蓄積性がないことが明らかとなった。
 (2)忍容性
 本薬剤との因果関係が否定されず副作用と判断された症状および所見は,36例中に軟便が11例(30.6%),下痢および血中尿酸減少が各5例(各13.9%),腹痛が2例(5.6%),頭痛,口渇,悪寒,胸痛,熱感,流涎過多,悪心,異常感,胃不快感および食欲減退が各1例(各2.8%)であった。これらの副作用に重篤なものはなく,今回の用法・用量における忍容性が確認された。

Key word

tazobactam/piperacillin, phase I study, pharmacokinetics, safety, intestinal bacterial flora

別刷請求先

東京都港区西新橋3-25-8

受付日

平成21年7月24日

受理日

平成22年2月12日

日化療会誌 58 (S-1): 1-10, 2010