Vol.58 No.2 March 2010
原著・臨床
抗MRSA薬のTDMに関する全国アンケート調査
日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師制度委員会抗菌薬TDM標準化ワーキンググループ*
要旨
わが国における抗MRSA薬vancomycin(VCM),teicoplanin(TEIC),arbekacin(ABK)のtherapeutic drug monitoring(TDM)に関する大規模な実態調査を実施した。対象は,社団法人日本化学療法学会薬剤師会員の在籍する563施設とし,302(53.6%)施設より回答を得た。回答施設の80%以上は,薬剤師が抗MRSA薬の臨床的なコンサルテーションを提供していた。TDMの一般的な推奨は,VCM;投与開始3日目のトラフ濃度をモニタリングし,目標血中濃度域を10 μg/mL以上,TEIC;投与開始4日目のトラフ濃度をモニタリングし,目標血中濃度域を15 μg/mL以上,ABK;投与開始3日目のトラフ濃度とピーク濃度をモニタリングし,目標血中濃度域はトラフ濃度を2 μg/mL以下,ピーク濃度を9 μg/mL以上であった。国内の診療ガイドラインの記載や保険診療との間に乖離を認めるものもあったが,VCM,およびTEICのTDMは,標準化が可能と考えられた。一方で,ABKピーク濃度採取のタイミングにおける施設間差や,1カ月に2度以上のTDMを実施した場合に発生する保険診療の問題などは,改善すべき課題と考えられた。
Key word
therapeutic drug monitoring, vancomycin, teicoplanin, arbekacin, questionnaire
別刷請求先
*東京都文京区本郷3-28-8 日内会館B1
受付日
平成22年1月20日
受理日
平成22年2月4日
日化療会誌 58 (2): 119-124, 2010