Vol.58 No.2 March 2010
市販後調査
肺アスペルギルス症に対するmicafunginの臨床効果
1)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座*
2)昭和大学医学部臨床感染症学
3)大阪赤十字病院呼吸器内科
4)独立行政法人 国立病院機構東名古屋病院臨床研究部
5)財団法人 結核予防会複十字病院呼吸器内科
6)国立感染症研究所生物活性物質部
要旨
今回われわれは,呼吸器領域で実施された市販後調査の成績をもとに,慢性肺アスペルギルス症(chronic pulmonary aspergillosis:CPA)に対するmicafungin(MCFG)の有効性および安全性を検討した。
35施設から収集された109例のうち,CPAの診断が確認できなかった症例や併用薬の規定に違反した症例計18例を除く91例を有効性解析対象例とした。このうち,評価不能であった11例を除く80例の有効率は63.8%(51/80例)であった。診断名ごとの有効率は慢性壊死性肺アスペルギルス症(chronic necrotizing pulmonary aspergillosis:CNPA)62.0%(31/50例),アスペルギローマ66.7%(20/30例)であった。本薬剤以外の抗真菌薬併用の有無別の有効率は,本薬剤単独治療群(単独群)は57.1%(24/42例),他の抗真菌薬併用治療群(併用群)は71.1%(27/38例)であった。本薬剤の投与量別有効率は,軽症例は「150 mg以下」群69.8%(30/43例),「150 mg超」群68.4%(13/19例),重症例は,「150 mg以下」群28.6%(2/7例),「150 mg超」群54.5%(6/11例)であった。
安全性については,単独群61例のうち22例(36.1%)に35件の副作用が認められた。主な副作用は肝機能異常であったが,これらはいずれも重篤でなく,また本薬剤との因果関係においては確実とされたものはなかった。一方,35件の副作用のうち,腎機能障害1件のみが重篤で,本薬剤との因果関係も確実と判断された。副作用発現に影響を及ぼすと考えられる加齢や投与量の増加についても,副作用発現症例率との間に明らかな関係は認められなかった。
これらの成績から,MCFGはCPAに対する有用な治療薬と考えられた。
Key word
micafungin, efficacy, safety, necrotizing pulmonary aspergillosis
別刷請求先
*長崎県長崎市坂本1-7-1
受付日
平成21年8月11日
受理日
平成22年1月29日
日化療会誌 58 (2): 128-139, 2010