Vol.58 No.5 September 2010
原著・臨床
Pazufloxacin注射液の投与量増加のための臨床第I相試験
東京女子医科大学感染対策部感染症科*
要旨
Pazufloxacin(PZFX)注射液の投与量増加のための臨床第I相試験を実施した。すなわち,(1)PZFX 1%製剤で健康成人を対象に1,500 mgおよび2,000 mg単回投与ならびに1,000 mg×2回/日,5日間反復投与,(2)0.5%製剤で健康成人を対象に1,000 mg×2回/日,6日間反復投与,(3)0.5%製剤で高齢者を対象に1,000 mg×2回/日,6日間反復投与の薬物動態および安全性を検討した。投与方法はいずれも60分点滴静注とした。
1.薬物動態
1%製剤での1,000 mg,1,500 mgおよび2,000 mg単回投与で,Cmaxと投与量との間に線形性がみられたが,AUCでは線形性はみられなかった。
0.5%製剤での1,000 mg 60分間点滴静注時の投与開始日のAUCは,健康成人では59.42 μg・hr/mL,高齢者では73.18 μg・hr/mLであった。高齢者のCcrの低下はAUCを大きくする一因と考えられた。また,1,000 mg×2回/日反復投与の血清中薬物濃度は健康成人および高齢者いずれも投与開始翌日には定常状態に達し,6日間投与での蓄積性はみられなかった。
2.安全性
1%製剤による1,500 mg単回投与で注射部位の疼痛および紅斑など,2,000 mg単回投与で紅斑による中止1名を含む注射部位の疼痛および紅斑などの有害事象が発現した。1,000 mg反復投与で紅斑および蕁麻疹による中止1名,紅斑による中止1名,ならびに他の6名全員に注射部位の有害事象を含む何らかの有害事象が発現したため投与を中止した。重篤な有害事象はみられなかったが,全員が中止されたため従来と同濃度である0.5%製剤に変更し,注意深く検討することとした。
0.5%製剤による1,000 mg反復投与で健康成人8名では薬疹による中止2名を含む4名5件に薬疹,異常便,注射部位紅斑および尿沈渣異常の有害事象が発現し,高齢者10名では血管炎による中止1名を含む5名16件に血管炎,異常便,下痢および注射部位反応(静脈炎,蕁麻疹,疼痛,紅斑およびそう痒感)の有害事象が発現したが,いずれも軽度または中等度で臨床上大きな問題となる有害事象は発現しなかった。
以上より,0.5%製剤の1,000 mg×2回/日,6日間反復投与時の健康成人および高齢者の安全性が確認された。
Key word
pazufloxacin, high dose, pharmacokinetics
別刷請求先
*東京都新宿区河田町8-1
受付日
平成22年6月1日
受理日
平成22年8月2日
日化療会誌 58 (5): 560-577, 2010