Vol.58 No.6 November 2010
原著・臨床
注射薬pazufloxacin 1回1,000 mg 1日2回投与時の敗血症を対象とした臨床第III相試験
1)神戸大学医学部附属病院感染制御部*
2)杏林大学医学部付属病院感染症科
3)東京慈恵会医科大学薬理学講座
(現 同大学感染制御科)
4)帝京大学医学部皮膚科
5)東京女子医科大学感染対策部感染症科
要旨
敗血症に対する注射用ニューキノロン系薬pazufloxacin(PZFX)1回1,000 mg 1日2回,最長14日間投与における有効性および安全性を検討した。
組み入れられた27例のうち,血液培養で原因菌が特定できた薬効評価症例(PPS)は6例であった。感染原発巣別では,泌尿器感染症3例,呼吸器感染症2例,腸腰筋膿瘍・腰椎椎間板炎1例であり,投与終了時の臨床効果は全例有効以上で有効率は6/6例であった。原因菌はEscherichia coli(大腸菌)3株,Streptococcus pneumoniae(いずれもPSSPすなわちペニシリン感受性肺炎球菌)2株,Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)1株で,すべて本薬剤投与により消失した。これら原因菌に対するPZFXのMICは≤0.025~1.56 μg/mLであった。FAS 27例の臨床効果は,著効11例,有効9例,無効3例および判定不能4例で,判定不能4例を除いた有効率は87.0%(20/23例)であった。
有害事象は27例中25例に101件,副作用は27例中21例に59件発現し,発現率はそれぞれ92.6%および77.8%であった。発現率5%以上の副作用は,AST上昇が25.9%(7/27例),注射部位疼痛およびALT上昇が各18.5%(5/27例),γ-GTP上昇が11.5%(3/26例),ALP上昇が11.1%(3/27例),下痢および血中ビリルビン上昇が各7.4%(2/27例)であった。副作用発現頻度は従来のPZFX注射液(1回500 mg×2回/日投与)に比べ高かったが,副作用の種類は同様であり,いずれも軽度または中等度で,特別問題となるものはなかった。
以上の成績から,敗血症に対してPZFX注射液1回1,000 mg 1日2回投与は,高い臨床的有用性が期待できることが示唆された。
Key word
pazufloxacin, high dose, sepsis
別刷請求先
*兵庫県神戸市中央区楠町7-5-2
受付日
平成22年8月2日
受理日
平成22年9月10日
日化療会誌 58 (6): 650-663, 2010