Vol.58 No.6 November 2010
原著・臨床
注射薬pazufloxacin 1回1,000 mg 1日2回投与時の細菌性肺炎を対象とした臨床第III相試験
1)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学系専攻感染免疫学講座先進感染制御学分野*
2)社会福祉法人 新潟市社会事業協会信楽園病院内科
3)杏林大学医学部付属病院感染症科
4)昭和大学医学部臨床感染症学講座
5)東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門
6)東京慈恵会医科大学薬理学講座
(現 同大学感染制御科)
7)帝京大学医学部皮膚科
8)東京女子医科大学感染対策部感染症科
要旨
細菌性肺炎に対するpazufloxacin(PZFX)注射液の1回1,000 mg×2回/日,最長14日間投与時の有効性および安全性,ならびに薬物動態と有効性および安全性との関係を非盲検試験で検討した。
Per protocol set(PPS)では,投与終了時の有効率81.8%(81/99例),肺炎球菌による肺炎76.9%(20/26例),肺炎球菌による肺炎4例を含む重症・難治性肺炎81.3%(13/16例)であった。投与終了時の菌消失率は,96.8%(60/62株),肺炎球菌による肺炎100%(25/25株),肺炎球菌による肺炎4例を含む重症・難治性肺炎9/9株であった。主な原因菌はStreptococcus pneumoniae 26株,Haemophilus influenzae 17株,Moraxella(Branhamella)catarrhalis 8株,Klebsiella pneumoniae 7株で,S. pneumoniaeに対するMICは0.78~3.13 μg/mL, MIC90は1.56 μg/mLであった。
PK解析が可能であった131例の本薬剤1,000 mg 1回投与時の薬物動態パラメータは,AUCが137.0 μg・hr/mL, Cmaxが32.0 μg/mLであった。薬物動態および原因菌のMICが判明した50例のうち,単独菌感染患者45例の臨床効果が期待される1日fAUC/MICのターゲット値(グラム陽性菌で>30,グラム陰性菌で>100)およびfCmax/MICのターゲット値>10の患者の投与終了時の有効率は各々77.3%(34/44例)および78.0%(32/41例)であり,50例での投与終了時の菌消失率は各々98.1%(51/52株)および98.0%(48/49株)であった。
有害事象は140例中114例(81.4%)に発現し,副作用は93例(66.4%)であった。重篤な副作用は喘息および間質性肺疾患が各1例1件であった。発現率5%以上の副作用は,注射部位反応36.4%(51/140例),ALT増加12.1%(17/140例),AST増加12.1%(17/140例)であった。ほとんどの副作用は軽度または中等度であり,従来の1回500 mg×2回/日投与と比べて副作用,特に注射部位反応の発現率は増加したが,副作用の種類は同様であった。また,AUCおよびCmaxが高い患者で中等度または重度の副作用発現頻度が増加する傾向がみられた。安全性確保のためには観察を十分に行うこと,高度のCcr低下患者に対しては投与間隔または用量調節を考慮することが必要と考える。
以上の成績から,PZFX注射液1回1,000 mg×2回/日投与は重症・難治性肺炎および肺炎球菌による肺炎に対して,高い臨床的有用性が期待できることが示唆された。
Key word
pazufloxacin, high dose, pneumonia, PK-PD
別刷請求先
*長崎県長崎市坂本1-7-1
受付日
平成22年8月2日
受理日
平成22年9月10日
日化療会誌 58 (6): 664-680, 2010