Vol.59 No.3 May 2011
原著・臨床
重症腹腔内感染症に対するdoripenemの有効性・安全性の検討
1)東邦大学医療センター大橋病院外科*
2)日本医科大学千葉北総病院外科
(現 日本医科大学付属病院)
3)日野市立病院
4)兵庫医科大学感染制御学
5)日本大学医学部附属板橋病院消化器外科
(現 田中医院)
6)東京慈恵会医科大学附属青戸病院外科
(現 東京洪誠病院)
要旨
Doripenem(DRPM,フィニバックス点滴用0.25 g,フィニバックスキット点滴用0.25 g)は,2005年7月に製造販売承認を取得した注射用カルバペネム系薬である。本研究は2006年4月から2008年3月に,「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準(GPSP)」に則り,重篤な腹腔内感染症に対するDRPMの有効性,安全性を確認することを目的として実施した。消化管穿孔性腹膜炎または腹腔内膿瘍に罹患し,かつ重症(SIRSの基準に準ずる)と判定された患者を対象にDRPMを1回0.5 g, 1日3回投与した。
参加33医療機関から119例が登録され,安全性評価対象症例118例,有効性評価対象症例89例,細菌学的効果評価対象症例15例について検討した。
腹腔内感染症89例(消化管穿孔性腹膜炎53例,腹腔内膿瘍36例)におけるDRPMの有効率は,77.5%(69例/89例)であった。また,副作用発現率は18.6%であり肝機能検査値に関する副作用が最も多かった。重篤な副作用は偽膜性大腸炎1例,AST増加,ALT増加各2例,γ-GTP増加,血中ビリルビン増加,血小板数増加,血小板数減少各1例であり,偽膜性大腸炎については,塩酸バンコマイシン(VCM)の投与により回復した。以上より,重篤な腹腔内感染症に対するDRPMの有用性が確認された。
Key word
doripenem, intraabdominal infection, gastrointestinal perforative peritonitis, intraabdominal abscess, systemic inflammatory response syndrome (SIRS)
別刷請求先
*東京都目黒区大橋2-17-6
受付日
平成22年12月20日
受理日
平成23年3月10日
日化療会誌 59 (3): 293-301, 2011