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書誌情報

Vol.59 No.S-1 May 2011

原著・臨床

Levofloxacin注射剤の母集団薬物動態/薬力学解析

谷川原 祐介1), 清水 貴子2), 戸塚 恭一3)

1)慶應義塾大学医学部臨床薬剤学教室
2)第一三共株式会社研究開発本部トランスレーショナルメディシン部
3)東京女子医科大学感染対策部感染症科

要旨

 Levofloxacin(LVFX)注射剤500 mgを日本人健康成人(高齢者および女性を含む),および呼吸器感染症患者に1日1回点滴静注した時の血漿中薬物濃度を用い,母集団薬物動態解析を行った。解析には,呼吸器感染症患者195例,健康成人64例より得られた血漿中薬物濃度1,381点を用いた。薬物動態モデルとして2-コンパートメントモデルを用い,非線形混合効果モデル(Nonlinear mixed effect model, NONMEM)により母集団薬物動態パラメータを推定した。薬物動態パラメータに影響を及ぼす因子を検討した結果,クリアランスに対するクレアチニンクリアランス,中心および末梢コンパートメントの分布容積に対する体重の影響が認められた。得られた母集団薬物動態パラメータを用いてシミュレーションした結果,腎機能の低下に伴い血漿中薬物濃度の上昇が認められたが,経口剤と同様の用法・用量調節により,投与1日目と7日目の血漿中薬物濃度が同程度となり,蓄積を避けることができた。モンテカルロシミュレーションにより呼吸器感染症患者に500 mgを1日1回投与した時のPK-PDパラメータを算出した結果,LVFXのMICが1 μg/mL以下の場合はStreptococcus pneumoniae感染症の有効性のターゲット値とされるAUC0-24h/MIC≥30,および耐性化抑制のターゲット値Cmax/MIC≥5をほぼ100%の被験者で満たした。さらに,注射剤と経口剤の母集団薬物動態パラメータより,経口投与後のバイオアベイラビリティは98%と推定された。以上より,LVFX注射剤投与後の薬物動態は腎機能の影響を受けること,経口剤と同程度の全身曝露量であることが示された。さらに,500 mgの1日1回投与はPK-PDの観点から適切な用法・用量であると考えられた。

Key word

levofloxacin, population pharmacokinetics, PK-PD

別刷請求先

東京都新宿区信濃町35

受付日

平成22年12月10日

受理日

平成23年2月1日

日化療会誌 59 (S-1): 55-64, 2011