Vol.59 No.4 July 2011
原著・臨床
PK-PD解析を考慮したタゾバクタム/ピペラシリンの腎機能低下患者における用法・用量の調節
東京慈恵会医科大学*
要旨
日本人の市中肺炎患者(平均のクレアチニンクリアランス推定値82.6 mL/min)におけるタゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC)の母集団薬物動態(PPK)解析結果に基づき,薬物動態と抗菌効果の関係(PK-PD)をシミュレーションし,市中肺炎患者と同様の%Time above MIC(%TAM)が得られることを指標に,腎機能低下患者におけるTAZ/PIPCの至適投与量および投与回数を推定した。%TAMの閾値は,PIPCの増殖抑制作用と最大殺菌作用が期待できるそれぞれ30%と50%に設定した。
敗血症および肺炎患者,あるいは重症の腎盂腎炎および複雑性膀胱炎患者においては,Ccrが10から40 mL/minの場合は2.25 g 1日3回投与もしくは4.5 g 1日2回投与が推奨された。また,Ccrが10 mL/min未満の敗血症患者および肺炎患者の場合は2.25 g 1日2回投与が推奨された。
重症・難治の肺炎患者においては,Ccrが20から40 mL/minの場合は4.5 g 1日3回投与,Ccrが10から20 mL/minの場合は1回2.25 gを1日4回投与もしくは1回4.5 gを3回投与,Ccrが10 mL/min未満の場合は2.25 g 1日4回投与もしくは4.5 g 1日2回投与が推奨された。
重症でない腎盂腎炎および複雑性膀胱炎患者においては,Ccrが10から40 mL/minのいずれの場合でも2.25 g 1日2回投与が推奨されると考えられた。
Key word
tazobactam/piperacillin, renal dysfunction, PK-PD
別刷請求先
*東京都港区西新橋3-25-8
受付日
平成23年3月10日
受理日
平成23年5月16日
日化療会誌 59 (4): 359-365, 2011