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書誌情報

Vol.59 No.6 November 2011

総説

病原真菌におけるカルシニューリン情報伝達経路の解明と新たな真菌症治療戦略への応用

宮崎 泰可, 河野 茂

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座(第二内科)

要旨

 現在の抗真菌薬には抗真菌スペクトルや副作用の問題があり,臨床医の治療薬選択の余地は狭く,特に免疫不全患者に発症した侵襲性真菌感染症は治療に難渋することも少なくない。有効な治療法を開発していくには,病原真菌のストレス応答機序や病原因子を解明し,真菌特異的な治療標的分子を同定する必要がある。これまでに,Candida albicansCryptococcus neoformansAspergillus fumigatusなどいくつかの主要な病原真菌において,タンパク質脱リン酸化酵素であるカルシニューリンが,種々のストレス応答に重要な役割を担っていることが明らかにされている。カルシニューリン情報伝達経路の阻害は菌の病原性を低下させるのみならず,既存抗真菌薬の有効性を高め,同時に耐性化の抑制効果も併せ持つ新たな真菌症治療戦略として期待される。本稿では,われわれのCandida glabrataにおける知見を中心に,病原真菌のカルシニューリン情報伝達機構について概説したい。

Key word

Candida glabrata, calcineurin, Crz1, drug-resistance, virulence

別刷請求先

長崎県長崎市坂本1-7-1

受付日

平成23年7月29日

受理日

平成23年8月2日

日化療会誌 59 (6): 573-579, 2011