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書誌情報

Vol.59 No.6 November 2011

原著・臨床

重症,難治性MRSA感染症に対するlinezolidの短期投与を目的とした投与計画の検討

高橋 佳子1), 竹末 芳生1), 中嶋 一彦1), 一木 薫1), 和田 恭直1), 石原 美佳2), 辰己 純代2), 木村 健2)

1)兵庫医科大学病院感染制御部
2)同 薬剤部

要旨

 目的:Linezolid(LZD)は,副作用発現回避と耐性化防止の観点から短期間投与であることが望ましい。そこでLZDを他の抗MRSA薬と計画的にスイッチして使用するストラテジー(Scheduled Sequential Therapy:SST)を実施し,その有用性について検討した。
 方法:2006年7月~2009年6月に感染制御部が介入しLZDを使用した18歳以上の患者を対象とした。SSTとして(1)septic shockや人工呼吸器関連肺炎等には初回からLZDを使用し,臨床症状の改善がみられれば他の抗MRSA薬へ変更するStep down therapy(SD群),(2)ドレナージ等手術が予定されている場合,それまで他の抗MRSA薬の投与を行い,周術期のみLZDに変更し,その後他の抗MRSA薬に戻す周術期限定使用(use restricted to peri-operative period:URPOP群)の2つの方法を行った。
 結果:調査期間中のLZD使用は331例で,SSTを行った症例は70例(21.1%,SD群:28例,URPOP群:44例,2例重複あり)であった。SST全治療におけるLZD投与期間は7.8±5.4日であった。SST全経過における有効症例は58/70例(82.9%)で,SD群71.4%,URPOP群90.9%であった。LZD使用期間に限定した有効症例は67/70例(95.7%)で,SD群100%,URPOP群93.2%であった。SSTにおける血小板減少発現率は28.6%(SD群35.7%,URPOP群25.0%)で,SSTを実施しなかったLZD使用症例における発現率41.4%と比較し低率な傾向を示した(p=0.051)。
 結論:SSTはLZD使用を短期間にとどめ,血小板減少は低率となった。また,難治,重症患者を対象にしたにもかかわらず高い有効率が得られた。

Key word

linezolid, MRSA, sepsis, thrombocytopenia

別刷請求先

兵庫県西宮市武庫川町1-1

受付日

平成23年4月12日

受理日

平成23年7月22日

日化療会誌 59 (6): 580-584, 2011