Vol.60 No.2 March 2012
市販後調査報告
耳鼻科領域感染症におけるlevofloxacin 500 mg 1日1回経口投与の有効性・安全性
1)第一三共株式会社学術調査部*
2)同 安全性情報部
3)同 データサイエンス部
要旨
2009年10月~2010年9月に実施したlevofloxacin(LVFX)500 mg 1日1回経口投与の使用成績調査(32,200例)のうち,耳鼻科領域感染症(外耳炎,中耳炎,副鼻腔炎,化膿性唾液腺炎)の症例(2,679例)を対象に本薬剤の有効性と安全性について検討した。
副作用発現率は耳鼻科領域感染症全体で1.87%(46/2,454例)であり,主な副作用は下痢,悪心等の胃腸障害が23例(0.94%),発疹,そう痒症等の皮膚および皮下組織障害が8例(0.33%),不眠症の精神障害が5例(0.20%)で,重篤な副作用は認められなかった。感染症別の副作用発現率は外耳炎が0%(0/123例),中耳炎が1.23%(6/486例),副鼻腔炎が2.03%(36/1,770例),化膿性唾液腺炎が5.33%(4/75例)であった。
有効率は耳鼻科領域感染症全体で94.7%(2,305/2,435例)であり,感染症別の有効率は外耳炎が96.7%(119/123例),中耳炎が92.3%(445/482例),副鼻腔炎が95.1%(1,669/1,755例),化膿性唾液腺炎が96.0%(72/75例)であった。
主な原因菌はStaphylococcus属(49.0%),Streptococcus pneumoniae(14.7%),Pseudomonas aeruginosa(11.7%),Haemophilus influenzae(9.0%)であった。菌消失率は全体で94.0%(282/300株)であり,主な原因菌の菌消失率はStaphylococcus属が92.5%(136/147株),S. pneumoniaeが95.5%(42/44株),H. influenzaeが100%(27/27株),P. aeruginosaが85.7%(30/35株)であった。また,この結果は,原因菌別の有効率と一致していた。
以上,LVFX 500 mg 1日1回経口投与は,耳鼻科領域感染症において,安全性に特筆すべき問題は認められず,外耳炎,中耳炎,副鼻腔炎,化膿性唾液腺炎いずれの感染症に対しても90%以上の有効率を示し,原因菌別の菌消失率,臨床効果も良好な成績が確認されたことから,有用性の高い薬剤であることが確認できた。
Key word
levofloxacin, safety, efficacy, postmarketing surveillance, otological infections
別刷請求先
*東京都中央区日本橋本町3-5-1
受付日
平成24年1月17日
受理日
平成24年1月23日
日化療会誌 60 (2): 175-187, 2012