Vol.61 No.4 July 2013
原著・臨床
切除可能大腸癌肝転移に対する術前S-1+Oxaliplatin+Bevacizumab併用療法の使用経験
豊橋市民病院一般外科*
要旨
大腸癌肝転移は大腸癌症例の予後を規定する重要な因子であり,その治療の第1選択は肝切除である。進行大腸癌に対するkey drugとしてS-1,oxaliplatin,bevacizumabは使用されているが,切除可能肝転移に対しての術前S-1+Oxaliplatin+Bevacizumab併用療法(以下,SOX+BV療法)の有効性や安全性についての十分なエビデンスはない。
今回われわれは,切除可能大腸癌肝転移に対して術前にSOX+BV療法を施行し肝切除を施行した6例を経験した。投与方法は,bevacizumab:7.5 mg/kg,oxaliplatin:130 mg/m2を第1日目に点滴静注し,S-1:80 mg/m2を14日間内服投与後,7日間休薬(SOX+BV療法)を3コース施行し,4コース目はbevacizumabを抜いたSOX療法を施行するスケジュールとした。最終のbevacizumab投与からは35日以上あけ,最終のSOX療法からは21日以上あけて肝切除を行った。化学療法の効果判定としてはCR 1例,PR 4例,SD 1例と増悪した症例は認めなかった。副作用としては,1例でgrade 3の好中球減少,1例でgrade 3の下痢を認めた。全例でR0手術を施行でき,術後合併症は,創感染を1例で認めたが重大な合併症は認めなかった。切除後の病理検査では,1例で背景肝に脂肪性肝炎を認めた。
今回,切除可能大腸癌肝転移に対する術前SOX+BV療法を6例に施行し,安全に手術を行うことができた。今後さらなる症例の集積が必要で,再発率や全生存期間などを含め検討が必要であると考えられた。
Key word
S-1, oxaliplatin, bevacizumab, neoadjuvant chemotherapy, colorectal cancer
別刷請求先
*愛知県豊橋市青竹町字八間西50番地
受付日
平成25年2月14日
受理日
平成25年4月16日
日化療会誌 61 (4): 343-346, 2013