Vol.61 No.5 September 2013
原著・臨床
血液透析患者におけるtazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)反復投与時の体内動態
1)特定医療法人 仁真会白鷺病院薬剤科*
2)同 診療部
要旨
これまでに,血液透析(hemodialysis:HD)患者におけるβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬tazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)1:8製剤の体内動態について,実際にHD患者で検討した報告はない。今回,肺炎または敗血症疑いと診断されたHD患者5名(年齢73.2±9.3歳,体重46.2±10.3 kg,男性1名,女性4名)を対象に,TAZ/PIPC 1回4.5 gを12 hごと(4.5 g BID)に30分かけて静脈内に点滴投与し,TAZとPIPCの体内動態を検討した。体内動態はいずれも1-コンパートメントモデルを用いて解析し,その結果に基づいてPIPCの血漿中濃度(総濃度および遊離型濃度)が最小発育阻止濃度(MIC)以上を維持する時間割合(%TAM)を算出した。初回投与時のTAZとPIPCのCmax(mean±SD)はそれぞれ37.5±9.3 μg/mL,386±121 μg/mLであった。反復投与(4~6日間)後のTAZとPIPCのCmaxはそれぞれ85.1±16.4 μg/mL,824±260 μg/mLであり,初回投与時のCmaxに比べ高値であった。TAZとPIPCのT1/2はそれぞれ14.8±5.5 h,10.0±4.1 hであり,腎機能正常者に比べ消失の著しい遅延が認められた。HD前後の血漿中濃度の低下率はTAZ 84.0±4.5%,PIPC 85.4±4.3%と大きかった。体内動態の評価が可能であった4例において,%TAMが50%以上を示すMICが64 μg/mLであること,および他の報告による認容性が確認されているCmaxを考慮した場合に,4.5 g QDもしくは2.25 g BIDがHD患者に対するTAZ/PIPC投与法の目安として提案された。なお,今回の5症例では判定が不能の1名を除き4例ともに有効であり,副作用は発現しなかった。
Key word
tazobactam/piperacillin, chronic renal failure, hemodialysis, pharmacokinetics
別刷請求先
*大阪府大阪市東住吉区杭全7-11-23
受付日
平成25年2月12日
受理日
平成25年6月25日
日化療会誌 61 (5): 427-434, 2013