Vol.62 No.3 May 2014
原著・臨床
泌尿器科領域における抗癌化学療法に伴う発熱性好中球減少症に関する多施設共同調査
1)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器病態学*
2)鹿児島大学医学部・歯学部附属病院血液浄化療法部
3)岐阜大学大学院医学研究科泌尿器科学分野
4)慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室
5)札幌医科大学医学部泌尿器科
6)産業医科大学医学部泌尿器科学
7)筑波大学付属病院腎泌尿器外科診療グループ
8)兵庫医科大学泌尿器科
9)広島大学大学院医歯薬保健学研究院腎泌尿器科学
10)藤田保健衛生大学腎泌尿器外科
11)UTI共同研究会
要旨
泌尿器科領域における精巣腫瘍,尿路上皮癌に対する抗癌化学療法は高頻度に行われているが,発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)に関する泌尿器科領域に特化した検討は少ない。今回,泌尿器癌に対する抗癌化学療法に伴うFNについて,後ろ向きに多施設共同調査を施行した。対象はUTI共同研究会に所属する泌尿器科メンバーの所属する10大学病院で,2010年1月から2011年12月に尿路上皮癌および精巣腫瘍に対して抗癌化学療法が開始された326症例,883コースとした。FNは326例中66例(20.2%),883コース中81コース(9.2%)に認められ,治療として抗菌薬と顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor:G-CSF)の投与はそれぞれ69コース(85.2%),77コース(95.1%)で投与されていた。一方,発熱を伴わない好中球減少症に対して抗菌薬とG-CSFはそれぞれ5コース(2.2%),144コース(62.1%)で投与され,予防的投与として抗菌薬よりもG-CSFが頻用されていた。統計学的な検討では,尿路上皮癌において単変量・多変量解析ともに化学療法レジメンの種類のみ有意差がみられ(GC vs GCP;p=0.0073,GC vs M-VAC;p<0.0001),精巣腫瘍における単変量・多変量解析ではEPよりBEPで有意にFNの発症率が高かった。泌尿器科領域においても,さらに大規模で前向きなエビデンスを蓄積していくことでFNに対して適切なマネジメントを行っていくことが可能であると考えられる。
Key word
anticancer chemotherapy, febrile neutropenia, urology, multicenter trial
別刷請求先
*岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
受付日
平成26年1月9日
受理日
平成26年3月4日
日化療会誌 62 (3): 374-381, 2014