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書誌情報

Vol.63 No.1 January 2015

原著・臨床

菌血症患者から分離されたStenotrophomonas maltophiliaに対するsulfamethoxazole-trimethoprimの薬剤感受性検査の検討

岩崎 教子1), 三宅 典子1), 斧沢 京子1), 西田 留梨子1), 門脇 雅子2), 清祐 麻紀子2, 3), 下野 信行1, 3)

1)九州大学大学院医学研究院病態修復内科学
2)九州大学病院検査部
3)九州大学病院グローバル感染症センター

要旨

 Stenotrophomonas maltophiliaの病原性は低いが,免疫抑制状態の患者に菌血症を起こすと致死的になる。治療薬はsulfamethoxazole-trimethoprim(ST合剤)が標準的であるが,過去6年間に当院で分離されたS. maltophiliaの約90%が薬剤感受性検査でST合剤耐性と報告されていた。当院でS. maltophiliaに対し行っている薬剤感受性検査は微量液体希釈法(BMD)だが,判定は必ずしも容易ではない。そこで,2005年4月から2011年3月までに九州大学病院において血液培養から分離されたS. maltophilia 22株を用いて,単独技師による目視判定を追加したBMD(BMD単独判定),複数技師による目視判定を追加したBMD(BMD複数判定),E test(ET),寒天平板希釈法(AD)による薬剤感受性検査を行い,比較検討した。その結果ST合剤に対する薬剤感受性は,BMD単独判定で90.9%,BMD複数判定で54.5%,ETで27.3%,ADで31.8%が耐性を示し,BMDの判定の難しさが明らかとなった。標準法であるADとの比較ではETで4.5%,BMD単独判定では49.0%に,BMD複数判定で13.7%にmajor error(ME)を認めた。BMD単独判定でMEが多かった原因としては,判定における目視過程の影響が考えられた。
 BMD単独判定でMEを生じた症例に関しては,予後に影響していた可能性もあり,その臨床背景や治療,転帰について電子カルテ上で後ろ向きに調査した。MEを認めた13症例を検討すると,3例にST合剤が投与されており,投与群での死亡率は33.3%であったのに対し,非投与群では30%であった。
 今回の検討では,幸いST合剤投与の有無による死亡率に及ぼす影響を認めなかったが,S. maltophiliaはST合剤に対するBMDによる薬剤感受性判定が困難であることを考えると,判定困難な場合にはETを併せて判断することが望ましいと考えられた。

Key word

Stenotrophomonas maltophilia, sulfamethoxazole-trimethoprim, broth microdilution method, E test, agar dilution method

別刷請求先

福岡県福岡市東区馬出3-1-1

受付日

平成26年1月6日

受理日

平成26年10月1日

日化療会誌 63 (1): 1-6, 2015