Vol.63 No.2 March 2015
総説
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae,CRE)等新型多剤耐性菌のグローバル化と臨床的留意点
名古屋大学大学院医学系研究科微生物・免疫学講座分子病原細菌学/耐性菌制御学分野*
要旨
1960年代にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が出現したのを契機に,1980年代に入るとバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)さらにESBL(拡張型基質特異性β-ラクタマーゼ)産生菌が出現し,1990年代には,多剤耐性結核菌(MDR-TB)や多剤耐性緑膿菌(MDRP)などのさまざまな薬剤耐性菌が新たに問題となってきた。2000年代に入ると,カルバペネムを含む複数の抗菌薬に多剤耐性を獲得した腸内細菌科(family Enterobacteriaceae)の細菌とともに多剤耐性アシネトバクター(MDRA),特にアシネトバクター・バウマニが海外の医療現場で急速に蔓延し始めた。これらによる感染症に対し有効性が期待できる抗菌薬がほとんどなく患者の予後もきわめて深刻なことから,欧州連合や米国政府は,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)等の新型多剤耐性菌への対策を政治課題として位置づけ,新規抗菌薬の開発を含む包括的戦略を展開し始めている。
Key word
carbapenemase, carbapenem, resistance, metallo-β-lactamase, Enterobacteriaceae
別刷請求先
*愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65
受付日
平成26年12月15日
受理日
平成26年12月17日
日化療会誌 63 (2): 187-197, 2015