Vol.63 No.3 May 2015

原著・臨床

尿路感染症主要原因菌のフルオロキノロン系抗菌薬を中心とした薬剤に対する感受性およびgyrA・parCにおけるQRDRの遺伝子変異の解析

家田　健史^1）, 桑原　京子^2）, 森本　ゆふ^2）, 久末　伸一^1）, 伊藤　輝代^2）, 堀江　重郎^1）, 平松　啓一^2）

^1）順天堂大学大学院泌尿器外科学講座^＊
2）順天堂大学医学部細菌学/感染制御科学講座

要旨

　われわれは順天堂医院泌尿器科患者より分離された尿路感染症の原因菌を解析した。グラム陰性菌のなかで主要なものは，Escherichia coli，Klebsiella pneumoniae，Pseudomonas aeruginosaの3菌種であった。これら3菌種の薬剤感受性試験の結果，特にE. coliにおけるフルオロキノロン耐性率の上昇が顕著であった。
　そこでCPFX（ciprofloxacin），LVFX（levofloxacin）の最小発育阻止濃度（minimum inhibitory concentration：MIC）0.25 μg/mL以上を示したE. coli 46株のgyrAおよびparC遺伝子のQRDR（quinolone resistance determining region）領域の塩基配列を解析した。結果，gyrA・parCともに変異が存在しない株が8株，gyrAまたはparCの1カ所のアミノ酸変異株が14株，3カ所の変異株が9株，4カ所の変異株が15株であった。MIC 16～32 μg/mLでは変異数4カ所の株が高頻度で出現したのに対し，MIC 64 μg/mL以上では出現頻度の低下が認められ，gyrA遺伝子，parC遺伝子におけるQRDRの変異以外のメカニズムも関与する可能性が考えられる。

Key word

urinary tract infection, Escherichia coli, fluoroquinolone, gyrA genes, parC genes

別刷請求先

^＊東京都文京区本郷3-1-3

受付日

平成26年9月22日

受理日

平成27年1月5日

日化療会誌 63 (3): 343-349, 2015