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書誌情報

Vol.63 No.3 May 2015

原著・臨床

Antimicrobial stewardship teamによる血液培養陽性患者ラウンドのアウトカム評価

前田 真之1), 詫間 隆博2), 吉川 雅之3), 内藤 結花3), 土屋 亜由美3), 大戸 祐治3), 峯村 純子3), 宇賀神 和久4), 小司 久志2), 石野 敬子1), 二木 芳人2)

1)昭和大学薬学部薬物療法学講座感染制御薬学部門
2)昭和大学医学部内科学講座臨床感染症学部門
3)昭和大学病院薬剤部
4)同 臨床病理検査部

要旨

 抗菌薬適正使用において菌血症患者の治療マネジメントをいかに行い,評価するかは重要な課題である。Antimicrobial stewardship team(AST)による介入が血流感染症治療にどのように影響するかを評価したデータは限られている。昭和大学病院では2013年より,感染症を専門とする医師,薬剤師,臨床検査技師で編成されたチームを発足し,血液培養陽性患者に対して介入とコンサルテーションを行うプログラムをスタートさせた。
 2013年4月から9月に血液培養陽性となった165症例を対象に介入を行った。2012年1月から6月に血液培養陽性となった143症例を対照群とした。いずれもコンタミネーションの頻度が高い報告がなされている菌種・属は除外し,患者個別の背景や重症度,治療内容を評価した。介入群と対照群で死亡率と入院期間に有意な差はみられなかったが,介入群では14日以内の菌血症の持続率が有意に低く,感受性のない抗菌薬を投与された症例が少ない傾向にあった。多変量解析では,入院日数に影響する因子が不適切治療と菌血症後の手術実施で,Charlson comorbidity index(CCI),Sequential organ failure assessment(SOFA)scoreは有意な因子ではなかった。一方で,院内死亡においてはCCI,SOFA score,不適切治療がリスク因子であった。
 ASTによる介入は,血流感染症における不適切治療を減少させる。一方で,今回の検討ではASTによる介入の有無と入院日数に明らかな相関を認めなかった。また,ASTの介入により患者の予後には統計学的な差はなかったが,不適切治療は患者予後のリスク因子であった。以上より,持続菌血症例の減少あるいは感受性のない抗菌薬の投与を行う事例を減少させることにより患者予後が改善される可能性が示された。

Key word

antimicrobial stewardship team, bacteremia, blood culture, sequential organ failure assessment score

別刷請求先

東京都品川区旗の台1-5-8

受付日

平成26年11月21日

受理日

平成27年1月16日

日化療会誌 63 (3): 350-356, 2015