Vol.63 No.3 May 2015
原著・臨床
グリコペプチド系抗菌薬のTDMに関する全国アンケート調査―抗菌薬TDMガイドラインとの比較―
1)兵庫医科大学病院感染制御部*
2)同 薬剤部
要旨
2012年に抗菌薬TDMガイドライン(以下,TDMガイドライン)が作成された。今回,vancomycin(VCM)およびteicoplanin(TEIC)について,臨床現場におけるTDMの実施状況とTDMガイドラインを比較検討するためにアンケート調査を実施した。対象は全国419施設の病院の薬剤師として,VCMおよびTEICのTDMに関するアンケート調査用紙を配布して,VCMは345施設(82.3%),TEICは300施設(71.6%)より回答を得た。TDM実施率に関して,「81%~100%」の施設はVCMで61.4%,TEICで55.3%であり,ともに50%以上の施設で認められたが,VCMのほうが全体として有意に高いTDM実施率を示した(p=0.011)。初回の血中濃度の採血日に関して,VCMは「3日目」が63.0%,TEICは「4日目」が50.3%で最も高率であった。VCMの目標トラフ値に関して,「通常の創感染」では約90%の施設が「12.5~15 μg/mL」前後であり,「感染性心内膜炎・院内肺炎などの重症感染」では「15~20 μg/mL」が約80%で認められた。一方,TEICでは,「通常の創感染」では「15~30 μg/mL」が約75%であり,重症感染では「20~30 μg/mL」が約50%で認められた。初期投与設計(腎機能正常,体重60 kgの場合)に関して,VCMはTDMガイドラインで推奨されている「15~20 mg/kg(または1 g)1日2回」が31.9%であり,「シミュレーションソフトを用いて設計している」が53.8%と最も高い割合であった。一方,TEICのローディングドーズはTDMガイドラインで推奨されている「400 mg 1日2回2日間」が38.0%で最も高率であったが,さらなる高用量負荷投与である「600 mg 1日2回2日間」や「800 mg 1日2回1~2日間」を実施している施設も認められた。初回の血中濃度の採血日や目標値はTDMガイドラインで推奨されている内容と整合性が取れていたが,依然として高いシミュレーションソフトへの依存やTEICにおける高用量負荷投与の設定など,今後改善すべき課題も明らかとなった。
Key word
therapeutic drug monitoring, vancomycin, teicoplanin, national survey
別刷請求先
*兵庫県西宮市武庫川町1-1
受付日
平成26年11月12日
受理日
平成27年3月4日
日化療会誌 63 (3): 357-364, 2015