Vol.63 No.4 July 2015
総説
抗菌化学療法における費用対効果の検討
神奈川県立汐見台病院薬剤科*
要旨
近年,抗菌化学療法の適正化においては,薬剤師の介入が重要視されてきている。2007年,米国感染症学会(IDSA)と米国医療疫学学会(SHEA)は,抗菌薬の適正管理を目的とした包括的戦略“Antimicrobial Stewardship”に関するガイドラインを合同で発表した。このなかで薬剤師は,適切な抗菌薬療法の重要な担い手として位置づけられているが,薬剤の選択や使用法のみならずその費用対効果に関しても配慮する必要がある。費用対効果の検討に関しては,必要に応じてファーマコエコノミクスによる分析方法を用いる。
今回われわれは,当院における菌血症患者を対象として,抗菌化学療法への薬剤師の介入が治療成績や費用対効果に及ぼす影響を,費用最小化分析を用いて検討した。また,市中肺炎患者を対象に単純な費用対効果も検討した。その結果,薬剤師が治療介入することによって,費用対効果の有意な改善が認められた。
今後“Antimicrobial Stewardship”を推進するうえで,医療経済的な側面にも配慮した薬剤師のより積極的な抗菌化学療法への介入が重要になると考えられた。
Key word
cost-effectiveness, antimicrobial stewardship, pharmacoeconomics
別刷請求先
*神奈川県横浜市磯子区汐見台1-6-5
受付日
平成27年1月5日
受理日
平成27年3月19日
日化療会誌 63 (4): 397-405, 2015