Vol.63 No.4 July 2015
原著・臨床
抗MRSA薬におけるantimicrobial usage density
1)兵庫医科大学病院感染制御部*
2)同 薬剤部
要旨
近年,抗菌薬使用量の算出方法として,抗菌薬使用密度(antimicrobial usage density:AUD(DDDs/1,000 bed days))が一般的であり,グラム陰性菌治療薬に関しては使用比率で評価することの有用性が報告されている。しかし,抗MRSA薬のvancomycin(VCM)およびteicoplanin(TEIC)に関しては,世界保健機構(WHO)が設定する1日標準投与量(WHO-DDD)と実際の1日使用量に乖離が推察され,実際の使用状況を評価するうえで1日標準投与量の見直しが必要と考えられる。今回,兵庫医科大学病院(以下:当院)における1日標準投与量(自施設DDD)を算出して,WHO-DDDを用いたoriginal AUDと自施設DDDを用いたmodified AUDとの比較を行った。2012年4月から2013年3月の期間での18歳未満,血液透析施行症例は対象外として,VCM,TEIC使用例の総投与量(負荷投与量やTDM後の投与設計の変更なども含む)から1日平均投与量を算出し,自施設DDDと定義した。そして,上記期間における各抗MRSA薬のoriginal AUD,modified AUDおよび抗MRSA薬全体における使用比率を算出した。VCMは114例,TEICは166例,1日平均投与量はおのおの1,566±506.3 mg,515±157.3 mgであった。1カ月ごとのOriginal AUDではVCM 6.5±3.4(29.4%),TEIC 8.4±1.4(38.1%)でTEICの使用比率が最も高率であったが,modified AUDではVCM 8.3±4.4(37.7%),TEIC 6.5±1.1(29.7%)でVCMの使用比率が最も高率であり,modified AUDで評価することで病院全体での抗MRSA薬の約4割はVCMが選択されていることが判明した。また,当院でのTEICの高用量負荷投与(600 mgを1日2回2日間,3日目1回)を開始した前後3年間(前期:2007年7月から2010年6月,後期:2010年7月から2013年6月)での使用量の評価では,前期のoriginal AUD 4.8±2.1,後期のoriginal AUD 8.4±2.2,modified AUD 6.5±1.7であり,original AUDでは平均1日投与量の増加によるものか,使用機会の増加によるものか評価が困難であったが,実際の使用量を考慮したmodified AUDを用いることで,TEICの使用機会が増加していることが明らかになった。自施設における抗MRSA薬の使用比率やその推移に関する評価において,自施設DDDとAUD算出対象が異なる場合には,実数と推算値に乖離が生じる場合もあるが,自施設の1日標準投与量を用いたmodified AUDの有用性が示された。
Key word
antimicrobial usage density, defined daily dose, vancomycin, teicoplanin
別刷請求先
*兵庫県西宮市武庫川町1-1
受付日
平成26年7月7日
受理日
平成27年3月23日
日化療会誌 63 (4): 411-418, 2015