Vol.63 No.6 November 2015
総説
日本の結核の現状―難治,多剤耐性結核も含めて―
福岡大学病院呼吸器内科*
要旨
日本では結核は昔の病気と思われがちであるが,結核は世界の3大感染症として猛威をふるっている。欧米諸国と比較すると,日本の結核罹患率は依然として高く,日本は未だ中蔓延国である。罹患率のみならず,診断治療に関しても問題が山積している。実際に結核の診療に従事した経験のある医師は少なくなり,診断の遅れが生じることはまれではない。結核に対する標準治療法はある程度確立しているにもかかわらず,他病死の影響もあるが,高齢者では明らかに治療成績が悪いのが現状である。他病死への対策,栄養状態の改善,また,治療反応に悪い場合には外科療法なども考慮が必要とされる。多剤耐性結核(multi-drug resistant tuberculosis;MDR-TB)も大きな問題である。日本における多剤耐性結核の比率は,未治療患者では0.7%と高くはないが,既治療患者では9.8%であり,さらに多剤耐性結核中の超多剤耐性結核の比率は29%と世界のなかでも特異な高さを示している。今後耐性化を生じさせない努力を行うとともに,これらの動向には注意を払う必要がある。本稿では現在の日本の結核の現状を,難治結核および多剤耐性結核に焦点をあて,概説を行う。
Key word
tuberculosis, intractable tuberculosis, multidrug-resistance
別刷請求先
*福岡県福岡市城南区七隈7-45-1
受付日
平成27年8月11日
受理日
平成27年8月20日
日化療会誌 63 (6): 540-543, 2015