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書誌情報

Vol.63 No.6 November 2015

原著・臨床

非血縁者間骨髄移植後のCytomegalovirus抗原血症に対するfoscarnetの安全性および有効性評価

佐野 智望1), 小井土 啓一1), 牧野 好倫1), 岩瀬 治雄1), 福田 隆浩2), 山本 弘史1, 3), 林 憲一1)

1)独立行政法人 国立がん研究センター中央病院薬剤部
2)同 造血幹細胞移植科
3)長崎大学病院臨床研究センター

要旨

 造血幹細胞移植後(移植後)のcytomegalovirus(CMV)感染症に対する第1選択薬のganciclovirは,副作用に重篤な骨髄抑制を有する。その際,foscarnet(FCN)を投与する場合があるが,本邦における移植後のCMV抗原血症・感染症に対する国内使用成績の報告は少なく,特に非血縁者間骨髄移植後についてはほとんど報告がない。そこで,2004年6月から2011年11月の期間中に,国立がん研究センター中央病院において非血縁者間骨髄移植後にCMV抗原血症と診断されFCNを投与された症例を対象とし,安全性および有効性を評価した。対象症例は59例で,全症例で安全性評価が可能であった。11例で腎機能障害を認めた(Grade 1/2/3が3例/7例/1例)。そのうち中止,用量調整にいたった症例は4例であった。電解質異常は,低Ca血症27例,低K血症17例,低Mg血症17例を認めたが,FCNの中止,減量の原因とはならなかった。投与開始後にGrade 4に悪化した骨髄抑制は,白血球減少2例,血小板数減少5例,血中ヘモグロビン減少2例,好中球数減少4例であった。
 有効性評価は59例中53例で行った。39例で陽性細胞数が減少し,うち34例では陰性化した。9例が不変であり,5例では増加を認めたが,全体として有意な低下がみられた。またCMV pp65抗原の減少率,陰性化率は海外からの報告と同等であり,この結果からFCNは本邦における非血縁者間骨髄移植後のCMV抗原血症の治療薬として安全かつ有効に使用可能であることが示唆された。

Key word

cytomegalovirus, foscarnet, CMV antigenemia, unrelated bone marrow transplantation

別刷請求先

東京都中央区築地5-1-1

受付日

平成27年4月16日

受理日

平成27年8月25日

日化療会誌 63 (6): 568-575, 2015