Vol.64 No.2 March 2016
原著・臨床
成人を対象としたASP7374(組換えインフルエンザHAワクチン)の第I/II相試験
1)慶應義塾大学医学部感染症学教室*
2)アステラス製薬株式会社開発本部
要旨
新規インフルエンザワクチンであるASP7374を健康成人に皮下(2用量)または筋肉内(1用量)に単回接種した時の免疫原性および安全性を比較し,臨床推奨用量を検討した。20歳以上50歳未満の成人男女を対象とし,ASP7374 15 μg/株皮下接種群,45 μg/株皮下接種群または45 μg/株筋肉内接種群のいずれかに1:1:1の比でランダムに被験者を割り付けた。筋肉内接種群は非盲検,皮下接種群は二重盲検とした。
免疫原性[赤血球凝集阻止(HI)抗体価]について,治験薬接種により,いずれの接種群でもすべてのウイルス株(A/H1N1,A/H3N2,B株)でHI抗体価の上昇が確認された。幾何平均抗体価増加倍率および抗体陽転率はいずれのウイルス株でも,45 μg/株筋肉内接種群が最も高く,次いで45 μg/株皮下接種群,15 μg/株皮下接種群の順であった。接種28日後の抗体保有率はいずれの接種群でもほぼ100%であった。有害事象の発現割合は,45 μg/株筋肉内接種群(43.6%)に比べ15 μg/株皮下接種群(60.0%)および45 μg/株皮下接種群(65.5%)でやや高く,局所反応および全身性反応も同様であった。局所反応および全身性反応のほとんどは,接種後2日以内に発現し,事象発現から8日以内に消失した。以上より,ASP7374接種による免疫原性が確認され,インフルエンザ予防ワクチンとして問題ない安全性を有すると考えられた。また,臨床推奨用量はASP7374 45 μg/株皮下接種または45 μg/株筋肉内接種であると考えられた。
Key word
influenza, HA vaccine, phase I/II study, adult
別刷請求先
*東京都新宿区信濃町35
受付日
平成27年6月29日
受理日
平成27年11月17日
日化療会誌 64 (2): 244-252, 2016