Vol.64 No.2 March 2016
原著・臨床
ASP7374(組換えインフルエンザHAワクチン)の筋肉内接種による高齢者を対象とした第III相試験
1)国立病院機構東京病院呼吸器センター*
2)アステラス製薬株式会社開発本部
3)慶應義塾大学医学部感染症学教室
要旨
新規インフルエンザワクチンであるASP7374を61歳以上の男女に単回筋肉内接種(45 μg/株)した時の免疫原性および安全性を検討した。
免疫原性[赤血球凝集阻止(HI)抗体価]について,接種28日後のHI抗体の幾何平均抗体価は,すべてのウイルス株(A/H1N1,A/H3N2,B株)で治験薬接種前と比較して上昇した。また,接種28日後の中和抗体の幾何平均抗体価も,すべてのウイルス株で治験薬接種前と比較して上昇し,ASP7374の高齢者に対する免疫原性が確認された。
有害事象の発現割合は36.4%,副反応の発現割合は21.8%であった。発現割合が10%以上の有害事象はなく,5%以上の有害事象は,倦怠感,疼痛,鼻咽頭炎であった。局所反応および全身性反応の発現割合は21.8%であった。発現割合が5%以上であった局所反応および全身性反応は,疼痛,倦怠感であった。いずれの局所反応および全身性反応も接種翌日までに発現し,発現から3日以内に回復した。
以上より,ASP7374 45 μg/株を61歳以上の男女に単回筋肉内接種した際の免疫原性が確認され,安全性についても大きな問題はみられなかった。
Key word
influenza, HA vaccine, phase III study, intramuscular injection, elderly
別刷請求先
*東京都清瀬市竹丘3-1-1
受付日
平成27年6月29日
受理日
平成27年11月17日
日化療会誌 64 (2): 273-279, 2016