Vol.64 No.3 May 2016
原著・臨床
マイクロスキャン®Pos Combo 3.1Jパネルを用いたプロンプト法でMIC 1 μg/mLおよび2 μg/mLを示すmethicillin-resistant Staphylococcus aureus株に対するvancomycinの有効性
1)日本医科大学多摩永山病院薬剤部*
2)同 中央検査室
3)同 外科
4)東京薬科大学薬学部病原微生物学教室
要旨
近年,methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)に対しvancomycin(VCM)を投与する場合,AUC0-24/MIC≥400が臨床的および細菌学的効果を予測する指標となるとされており,MIC測定結果が2 μg/mL以上の場合はVCMによる治療失敗率が高くなることが知られている。しかし指標となるMIC測定結果は測定方法によって異なり,2015年4月以前に製造されたマイクロスキャン®Pos Combo 3.1Jパネルを用いたプロンプト法では,基準濁度法よりもVCMのMIC値が高値になるという報告がある。
本研究では2011年4月から2014年12月に当院に入院し,マイクロスキャン®Pos Combo 3.1Jパネルを用いたプロンプト法にて感受性測定を行ったMRSA感染症患者49例を対象として,[MIC 1 μg/mL]群および[MIC 2 μg/mL]群に分類し,本法で測定されたMICとVCMの治療効果との関連性を検証するため,有効性の比較評価を行った。
両群の有効率比較において,MRSA感染症全例で(40.7% vs. 63.6%,p=0.114),MRSA肺炎症例で(47.1% vs. 70%,p=0.347),MRSA敗血症症例で(50% vs. 50%,p=1.000)と,それぞれ両群間の治療効果に有意な差を認めなかった。この結果から,プロンプト法で測定されたMICは両群間に治療効果との関連性は認められず,測定結果をそのまま治療効果予測に用いるのは不適当と考えられ,MIC 2 μg/mLと報告された株に対してもAUC0-24≥400 mg・hr/Lを満たすことでMIC 1 μg/mLの株と同等の治療効果が得られる可能性が示唆された。このことから測定されたMICを鵜呑みにするのではなく,施設ごとの検査法の特徴を把握し治療薬を選択する必要性があると思われる。
Key word
MRSA, vancomycin, area under the curve, MIC, efficacy
別刷請求先
*東京都多摩市永山1-7-1
受付日
平成27年9月3日
受理日
平成28年1月19日
日化療会誌 64 (3): 530-538, 2016