ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.65 No.3 May 2017

原著・臨床

Levofloxacin注射剤の腹膜炎患者を対象とした臨床試験

竹末 芳生1), 大江 慶司2), 奥田 恭行2), 相崎 一雄3), 河内 保之4), 清水 潤三5), 岡本 好司6), 三鴨 廣繁7)

1)兵庫医科大学感染制御学
2)第一三共株式会社研究開発本部
3)神奈川県厚生農業協同組合連合会相模原協同病院外科
4)新潟県厚生農業協同組合連合会長岡中央綜合病院外科
5)独立行政法人労働者健康安全機構大阪労災病院外科
6)北九州市立八幡病院外科
7)愛知医科大学病院感染症科

要旨

 入院加療が必要と判断された腹膜炎または骨盤内炎症性疾患による腹膜炎患者を対象にlevofloxacin(LVFX)注射剤500 mg 1日1回,3~14日間点滴静脈内投与の有効性および安全性を検討した。また,腹膜炎患者を対象にLVFX注射剤500 mg投与後の腹腔内滲出液中への薬物移行性について検討した。
 臨床効果:治癒判定時の臨床効果(主要評価)は,腹膜炎で61.5%(8/13),骨盤内炎症性疾患による腹膜炎で100.0%(4/4)であった。「無効」と判定された被験者では,膿瘍形成を伴った腹膜炎が含まれており,LVFX注射剤治療が効果不十分であった原因は,嫌気性菌の影響が強い腹腔内膿瘍の併発によるものと考えられた。
 微生物学的効果:投与終了時の微生物学的効果は,腹膜炎で50.0%(4/8),骨盤内炎症性疾患による腹膜炎で75.0%(3/4)であった。
 薬物動態:LVFX注射剤点滴開始後の腹腔内滲出液中LVFX濃度は,点滴開始7~9時間後にピーク値を示し,平均値(範囲)は12.9(5.7~18.5)μg/gであった。血漿中LVFX濃度に対する腹腔内滲出液中LVFX濃度の比の平均値(範囲)は1.95(1.35~2.30)であった。
 安全性:有害事象発現率および副作用発現率は,71.4%(15/21)および28.6%(6/21)であった。2名以上に発現した副作用は注射部位紅斑のみであり,副作用の重症度はすべて軽度,転帰はすべて回復であった。
 以上の成績から,LVFX注射剤は,腹膜炎(骨盤内炎症性疾患による腹膜炎を含む)に対して,治療効果が期待でき,安全性に重大な問題はないと判断した。なお,膿瘍形成を伴う腹膜炎など,嫌気性菌が病態に重大な影響を与える場合には,抗嫌気性菌薬との併用の必要性が示唆された。

Key word

levofloxacin, peritonitis, pelvic inflammatory disease

別刷請求先

兵庫県西宮市武庫川町1-1

受付日

平成28年7月8日

受理日

平成28年10月28日

日化療会誌 65 (3): 456-468, 2017