Vol.65 No.4 July 2017
総説
中小病院での抗菌薬適正使用と感染管理における認定薬剤師の活動
新潟薬科大学薬学部臨床薬学研究室*
要旨
日本の病院の約7割は,病床数200床未満の中小病院である。中小病院の感染対策ガイドラインにおいても,推奨度の違いはあるが,大規模病院と同様の感染対策が望まれている。一方,中小病院には,感染対策の専門知識をもつ医療従事者が必ずしも在籍していることはなく,そのなかで薬剤師は感染症治療にも感染制御にもかかわれることから,中心となって活動すべきである。自身の経験も含め,以下の項目について,いくつかの報告をまとめた。(1)抗菌薬使用量の算出,(2)Therapeutic Drug Monitoring(TDM)の導入,(3)細菌検査結果の把握とアンチバイオグラムの作成,(4)抗菌薬適正使用ラウンド,(5)アウトブレイクへの対応。
日本では「地域包括ケアシステム」の構築が進められている。また,本学会をはじめとした8学会による,「抗菌薬適正使用支援(Antimicrobial Stewardship;AS)プログラム推進のために」という提言が今年発表された。これは,専ら耐性菌対策のための抗菌薬の適正使用を推進するものであるが,いまや耐性菌は地域ぐるみで対応していかなくてはならない。薬剤師の抗菌薬適正使用への積極的関与が期待されるなか,認定薬剤師は病院での活動が主であるが,今後は地域レベルでの抗菌薬適正使用推進など「連携」「教育」という面からもアプローチしていくべきと考える。
Key word
infectious disease chemotherapy pharmacist, infection control practitioner
別刷請求先
*新潟県新潟市秋葉区東島265番地1
受付日
平成28年12月1日
受理日
平成29年2月7日
日化療会誌 65 (4): 552-557, 2017