Vol.65 No.4 July 2017
原著・臨床
Tosufloxacin細粒小児用15%の小児マイコプラズマ肺炎を対象とした臨床第III相試験
1)川崎医科大学小児科学講座*
2)国立成育医療研究センター臓器・運動器病態外科部
3)富山化学工業株式会社臨床開発部
4)元 北里大学感染制御研究機構(故人)
5)慶應義塾大学医学部感染症学教室
要旨
小児マイコプラズマ肺炎患者に対してニューキノロン系薬であるtosufloxacin(TFLX)tosilate hydrateを1回6 mg/kg,1日2回投与した際の有効性および安全性を,clarithromycin(CAM)を対照薬とした多施設共同,ランダム割付,オープンラベル実薬対照試験で検討した。
投与終了時又は中止時の解熱率および有効率は,TFLX群で93.9%(31/33名)および97.0%(32/33名),CAM群で80.0%(24/30名)および90.0%(27/30名)であった。また,マクロライド耐性Mycoplasma pneumoniaeが検出された患者に対する有効率は,TFLX群およびCAM群のいずれも2/2名であった。
投与終了時又は中止時のM. pneumoniaeの消失率は,TFLX群でM. pneumoniaeが検出された患者に対して4/4名,マクロライド耐性M. pneumoniaeに対して2/2株であった。CAM群では,M. pneumoniaeが検出された患者に対して3/5名,マクロライド耐性M. pneumoniaeに対して0/2株であった。
有害事象は,TFLX群の発現率は66.7%(22/33名)であり,重度の有害事象は発現しなかった。因果関係ありの有害事象の発現率は15.2%(5/33名)であった。10%以上で発現した有害事象は鼻咽頭炎および上気道の炎症で,いずれも15.2%(5/33名)であり,因果関係なしであった。CAM群では,有害事象の発現率は66.7%(20/30名),重度の有害事象は1件発現し,因果関係ありであった。因果関係ありの有害事象の発現率は10.0%(3/30名)であった。10%以上で発現した有害事象は下痢が13.3%(4/30名),嘔吐,胃腸炎および鼻漏がいずれも10.0%(3/30名)であったが,因果関係ありで発現率が10%以上の有害事象はなかった。関節に関連する有害事象はTFLX群およびCAM群で成長痛が各1件発現し,因果関係はいずれもなしであった。
以上,TFLXは小児マイコプラズマ肺炎に対してCAMと同等の解熱率とCAMを上回る微生物学的効果を示した。また,安全性でも大きな問題が認められなかった。これらのことから,TFLXは小児マイコプラズマ肺炎に対して有用な薬剤であると考えられた。
Key word
tosufloxacin, child, Mycoplasma pneumoniae
別刷請求先
*岡山県倉敷市松島577
受付日
平成29年1月19日
受理日
平成29年3月1日
日化療会誌 65 (4): 585-596, 2017