Vol.66 No.3 May 2018
総説
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017に基づいた小児期市中肺炎の治療
旭川厚生病院小児科*
要旨
小児の市中肺炎の原因微生物は調査地域,調査時期,検査方法などによって異なるが,少なくとも1/3以上はウイルス性と考えられる。したがって,症状や検査結果をもとに抗菌薬投与の必要性を判断しなければならない。抗菌薬が必要な原因微生物としては乳幼児ではStreptococcus pneumoniae,Haemophilus influenzae,年長児ではMycoplasma pneumoniaeが多い。近年,これらの原因菌には耐性株が少なくなく,抗菌薬の選択には注意が必要となっている。小児の市中肺炎に対して,日本小児感染症学会と日本小児呼吸器学会の合同で『小児呼吸器感染症診療ガイドライン』が刊行された。最新の2017年版では,原因微生物が不明な時の初期治療として,細菌性肺炎を疑う時にはamoxicillinを第一選択に推奨しているが,amoxicillinに感受性が低いH. influenzaeが少なくないことから,cefditoren-pivoxilなどのセフェム系経口抗菌薬を第二選択としている。非定型肺炎を疑う時にはmacrolide系を第一選択に推奨し,macrolide耐性M. pneumoniaeが想定される際にはtosufloxacin,8歳以上であればminocyclineも選択肢となる。入院して治療する時の初期治療にはampicillinが推奨されている。
Key word
community-acquired pneumonia, antibiotic therapy, child
別刷請求先
*北海道旭川市1条通24丁目
受付日
2017年12月18日
受理日
2018年1月11日
日化療会誌 66 (3): 366-372, 2018