Vol.66 No.4 July 2018
症例報告
卵管卵巣膿瘍によるPseudo-Meigs症候群の1例
1)赤穂市民病院総合診療科*
2)市立加西病院産婦人科
要旨
卵管卵巣膿瘍(tuboovarian abscess:TOA)は高度な骨盤内炎症性疾患である。Pseudo-Meigs症候群は,卵巣線維腫以外の骨盤内腫瘤に胸水および腹水を伴い,腫瘤切除で胸水・腹水も改善する症候群として知られている。
TOAに伴うPseudo-Meigs症候群の報告は過去にない。今回,TOAに伴いPseudo-Meigs症候群を示した症例を経験したので報告する。
症例は51歳,3回経産3経産婦。他院から卵巣癌の疑いのために当院へ紹介された。当院で行った血液検査で炎症反応とCA19-9 CA125の高値を認めた。そして画像検査では子宮の後面に約15 cm×20 cm×30 cmの巨大な骨盤内腫瘤を認め,卵巣癌やTOAを最も疑った。抗菌薬を投与したが改善はなく経過中に胸腹水の貯留を認めた。そのため,一時卵巣癌によるPseudo-Meigs症候群と診断したが開腹術を行い,病理組織診を行ったところ悪性所見はなくTOAと診断した。
TOAはPseudo-Meigs症候群を示しえる。画像診断などによる検査で正確な診断ができない場合,開腹手術を行い病理学的な診断を行うことが必要である。
骨盤内腫瘤に胸腹水の貯留を認めた場合には本疾患も考慮すべきである。
Key word
tuboovarian abscess, ovarian abscess, pleural effusion, ascites
別刷請求先
*兵庫県赤穂市中広1090
受付日
2018年2月9日
受理日
2018年3月26日
日化療会誌 66 (4): 521-525, 2018